緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

高熱を下げる解熱鎮痛薬の選び方 イブプロフェンはNGか

両者の大きな違いは炎症を抑える作用があるかないか
両者の大きな違いは炎症を抑える作用があるかないか

 解熱鎮痛薬の「イブプロフェン」は新型コロナウイルス感染症を悪化させるのか。世界中で情報が錯綜している。

 きっかけは、先月14日にフランスのベラン保健相による「新型コロナウイルスに感染している際に服用すると症状が悪化する可能性がある」というツイッターでの発信だった。

 これを受け、世界保健機関(WHO)は「新型コロナウイルスに感染している疑いがある場合はイブプロフェンを自らの判断で服用しないでほしい」と述べ、代わりの解熱鎮痛薬として「アセトアミノフェン」を使うよう呼びかけた。しかしその後、治療に当たっている医師を調査した結果、通常の副作用以外に症状を悪化させるという報告はなかったと説明し、「控えることを求める勧告はしない」と表明している。

 イブプロフェンが新型コロナウイルスを悪化させるかどうかははっきりしていない。しかし、同じウイルス感染症であるインフルエンザでは、15歳未満の子供に使用するとインフルエンザ脳症を引き起こすリスクがあるとされている。

 岡山大学病院薬剤部の神崎浩孝氏は言う。

「一般的に使われる解熱鎮痛薬には大きく2種類があります。1つが『NSAIDs』(エヌセイズ)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬で、イブプロフェンやアスピリンがこちらに該当します。もう1つが『アセトアミノフェン』と呼ばれる解熱鎮痛薬で、カロナールが代表的です。両者の大きな違いは炎症を抑える作用があるかないかで、NSAIDsは抗炎症作用があり、アセトアミノフェンにはありません。まだ正確なことはわかっていませんが、この抗炎症作用が新型コロナウイルス感染症を悪化させるのではないかという意見が報告されているのです」

 アセトアミノフェンは脳の中枢神経や体温調節中枢に作用することで効果を出す。効果が穏やかで副作用も少ないため、小さな子供にも処方される。一方のNSAIDsは、体内で炎症、発熱、痛みを引き起こす「プロスタグランジン」という物質がつくられるのを抑えることで症状を改善する。プロスタグランジンは「シクロオキシゲナーゼ」(COX)という酵素によってつくられていることから、NSAIDsはCOXの働きを阻害して効果を発揮する。効き目が強く副作用も多いため、小さな子供には使われない。

「COXには内皮細胞を保護して粘膜を修復させる働きもあります。NSAIDsはその働きを阻害してしまうので、胃腸障害などの副作用が表れるのです。胃腸だけではなく、血管の内皮細胞の保護作用も抑制するため、例えばインフルエンザなどで高熱が出て、脳の血管が炎症を起こして傷んでしまっているときにNSAIDsを服用すると、血管の修復を阻害して脳血管に損傷を招き、脳症の悪化につながるのではないかと考えられています」(神崎浩孝氏)

 2000年度の「インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究班」の調査では、NSAIDsを使用したグループは、他の解熱剤を使用したグループと比べて予後が悪かったと報告されている。厚労省は、明確な因果関係は認められないもののインフルエンザ脳炎・脳症患者に対してNSAIDsの投与を禁忌とした。

 神崎氏の見解では「38度5分を超えるような高熱が出た場合、熱性けいれんを防いだり、臓器へのダメージを考えると解熱したほうがいい」という。インフルエンザと同じくウイルス感染症である新型コロナウイルスでも、高熱が出たときはアセトアミノフェンを使うのが無難といえる。

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