Dr.中川 がんサバイバーの知恵

コロナで相次ぐ外来閉鎖 がん治療継続では2つを確認したい

永寿総合病院では院内感染が100人を超えた
永寿総合病院では院内感染が100人を超えた(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの感染拡大で、各地の医療機関で院内感染が相次いでいます。東京の永寿総合病院では、感染者が100人を超え、7人が死亡。先月24日からは、外来を閉鎖しています。

 院内感染は、慶応大病院や国立がん研究センター中央病院でも確認されていて、それぞれ先月28日、31日から外来を閉鎖。新規の初診受け付けを停止しています。

 各地の感染報告を見ると、このような事態は今後増えるでしょう。そこで、今回はがん治療での外来閉鎖の影響を考えます。

 気になるのは、治療を受けている人が、外来閉鎖でその後の治療がどうなるかでしょう。まず、全国のがん診療連携拠点病院や大学病院は、再診の方は継続して治療を受けられる態勢が維持されると思います。慶大病院も国立がん研究センターも、再診患者の診察は通常通りと発表しました。

■専門クリニックは要注意

 では、問題は何か。都市部を中心に広がっているがん治療専門クリニックです。そういう小規模なクリニックで院内感染が発生すると、休診によってがん治療が中断される可能性があります。放射線も分子標的薬も、通院での治療がベースになっているのです。

 放射線でいうと、3次元でピンポイントでがんに照射する計画を立てます。正常な部位への影響を極力避け、副作用が起こるリスクを抑えながら治癒を目指します。

 それが定位放射線と呼ばれる最新の放射線の治療計画で、たとえば前立腺がんなら、照射日数は5日で、1日おきに、2週間で済みます。従来の放射線だと、38回に上ります。土日は休みですから、治療期間は8週間と長い。

 治療期間の長短はありますが、計画通りに放射線を照射できないと、治療を再開しても、その後の治癒率や生存率が下がる恐れがあるのです。放射線の照射量が5%違うだけで、治癒率が変わるという報告もあります。仮に1週間でも治療が中断されると、非常に問題でしょう。

 そんなことを踏まえると、がんの治療をどこで受けるか。万が一のことを想定しておくことは、大切です。もしがん専門クリニックを念頭に入れているなら、がん診療連携拠点病院や大学病院との連携の有無を確認しておくこと。連携がなければ、避けた方がいいかもしれません。

 もう一つは、治療の計画書を主治医からもらっておくことです。抗がん剤なら、別の病院で同じ治療を受けやすくなります。

 放射線は、装置によって性能が違うため、治療計画書があっても、別の医療機関で同じ治療が受けられるとは限りません。放射線治療は、代替の医療機関を探すのも困難です。

 このような考え方は災害時にも役立ちます。ぜひ頭に入れておいてください。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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