Dr.中川 がんサバイバーの知恵

コロナで相次ぐ外来閉鎖 がん治療継続では2つを確認したい

永寿総合病院では院内感染が100人を超えた(C)日刊ゲンダイ

 では、問題は何か。都市部を中心に広がっているがん治療専門クリニックです。そういう小規模なクリニックで院内感染が発生すると、休診によってがん治療が中断される可能性があります。放射線も分子標的薬も、通院での治療がベースになっているのです。

 放射線でいうと、3次元でピンポイントでがんに照射する計画を立てます。正常な部位への影響を極力避け、副作用が起こるリスクを抑えながら治癒を目指します。

 それが定位放射線と呼ばれる最新の放射線の治療計画で、たとえば前立腺がんなら、照射日数は5日で、1日おきに、2週間で済みます。従来の放射線だと、38回に上ります。土日は休みですから、治療期間は8週間と長い。

 治療期間の長短はありますが、計画通りに放射線を照射できないと、治療を再開しても、その後の治癒率や生存率が下がる恐れがあるのです。放射線の照射量が5%違うだけで、治癒率が変わるという報告もあります。仮に1週間でも治療が中断されると、非常に問題でしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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