緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

英国での「3つの終息シナリオ」と血液抗体検査の役割

ジョンソン首相も感染
ジョンソン首相も感染(C)ロイター

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大はいつ終息するのか? 感染症数理モデルを使った、新型コロナの感染拡大の予測に関する論文が、少しずつ出始めてきた。なかでも注目は「インペリアル・カレッジ・ロンドン」の研究チームが発表した英国での新型コロナウイルス感染症の終息シナリオ。日本の医療関係者の間で広く読まれている。

 そこには①何もしない(感染が拡大するのを放置する)②緩和(比較的緩い社会的制限をかけつつ、感染のピークを遅らせ、できる限り医療崩壊を防ぐ)③抑制(強い社会的制限をかけ、感染者の増大を抑え込む)――の3つのシナリオに基づいたシミュレーションが書かれている。長浜バイオ大学の永田宏教授(医療情報学)が言う。

「①を選択すると、感染ピークは3カ月後(6月中旬)になり、終息までに英国国民の81%が感染、死者は51万人に達する。医療は早い時期に完全に崩壊すると考えられています。②は患者の隔離、患者の家族(陽性反応がなくても)の外出自粛、70歳以上の高齢者に他人との距離(社会的距離)を十分に取るように指導するなど、比較的緩い措置を実施するものです。これによって、感染者をある程度減らし、感染ピークを遅らせることができますが、医療崩壊を防ぎきれず、終息までに25万人が死ぬとされています」

 ③は、患者の隔離、家族の外出自粛、高齢者の社会的距離の維持のほかに、学校・大学の閉鎖と、国民全員の社会的距離の維持など、かなり厳しい制限を課すやり方だ。

「ただし、継続的に行うのではありません。施策が効果を発揮して新規感染者が大幅に減れば、規制を緩めてもよいとしています。新規感染者が増加に転じたら、再び規制を強化。これをワクチンが完成・普及するまで、あるいは国民の大半が感染し、集団免疫を獲得するまで続けるというものです。これによって医療崩壊を防ぎ、死者を数万人程度に抑えることができるとしています」

 肝心のワクチンは世界各国で研究・開発が急がれているが、完成までに最低1年、増産態勢が整い、本格的に供給されるまでに半年、合計1年半かかるといわれている。なかには2年という人もいる。一方で、3月30日にアメリカのジョンソン&ジョンソン社が、今年9月までに臨床試験を開始し、来年初めには供給を開始するというニュースがあったが、実現するかどうかは分からない。

「感染対策をこの先どれだけ続けるかは、ワクチン次第です。それと③のシナリオを展開するうえで重要なのが、血液抗体検査です」

 血液中の新型コロナウイルスに対するIgMとIgGを測定するもので、IgM陽性・IgG陰性なら感染初期、IgM陽性・IgG陽性なら感染が進んだ状態、IgM陰性・IgG陽性なら、感染から回復し、免疫を獲得した状態と判断する。

「免疫獲得者は、もはやコロナに感染することはないので、いままでどおりの社会生活を送ることができます。③のシナリオを展開しようとすると、労働力が一次的に不足するが、社会復帰者が増えてくれば、次第に状況が緩和されていきます。つまり、③のシナリオの成否は、ワクチンと精度のよい免疫検査法ができるかどうかにかかっているのです」

 日本は、③のシナリオをたどっているようにみえるが、果たしてどうなるのか?

【写真特集】新型コロナ感染者増加で初の「緊急事態宣言」発令
【写真ギャラリー】小池都知事【緊急事態宣言】に向け緊急記者会見
【写真ギャラリー】「緊急事態宣言」へ カメラマンが見た東京の週末
【写真ギャラリー】外出自粛要請で花見客が激減
【写真ギャラリー】小池百合子都知事がマスク姿で定例会見
【写真特集】新宿、渋谷、銀座・・・夜の街が閑散<写真ルポ>
【写真特集】新型コロナウイルス問題で街の様子が一変
【写真ギャラリー】小池百合子東京都知事 緊急会見
【動画】新型コロナ対策で人体実験が行われている 上昌広

関連記事