がんと向き合い生きていく

ふさぎ込んでいた乳がん患者を前向きにさせた実家での出来事

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 会社員のSさん(43歳・女性)は、地方の女子高、首都圏にある短大の英語を学べる学科を卒業し、都内の商社に勤めました。それから数年でリストラに遭って辞め、新薬などの調査・統計を行っている小さな会社に再就職しました。

 知人から紹介されて交際した男性はいましたが、特に引かれることもなく独身で過ごしています。親しい友人はなく、映画が好きで日曜日はひとりでよく出かけ、自分では洋画評論家になれると思っています。特に不自由を感じることもなく暮らしてきました。

 農業を営んでいた両親は、60代で脳出血、心筋梗塞で亡くなりました。弟が家を継ぎ、結婚もして、田畑を見てくれています。

 ある日、乳がんの検診で腫瘤を指摘され、病院受診を勧められました。すぐに、ある病院の乳腺外科で検査を受けたところ、腋窩リンパ節転移が疑われました。結局、右乳腺と腋窩リンパ節郭清の手術を受け、「大きさ3センチの乳がん、リンパ節転移があり、ステージⅡB」との診断でした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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