「この腕を清めてください!」
近くの山寺から町一面を見渡した後、山を下って帰りました。古い家に戻って仏間で一息つくと、欄間に掲げてある祖父、祖母、父、母の大きな写真が目に入ります。
おじいさんは川で泳ぎを教えてくれた。おばあさんは、ままごとで遊んでくれた。お父さんは私がいつも徒競走でビリになっても、親が参加する競技に出て1等になって私に賞品をくれた。お母さんはいつもお弁当をつくってくれた……。
「そうか、ご先祖さまがいて、そして私がいるんだ。みんながいてくれたから私がいて、そしてこれからの私もあるんだ」
そう思っていたら、写真のみんなが「あなたを見守っていますよ」と言ってくれているような気がしました。
4歳になる甥が「おばちゃーん、ゴハンですよー」と大きな声で叫ぶのが聞こえました。「はーい」と答えながら、Sさんは東京に戻ったら担当医に「いつ乳房再建の手術をするか」を相談しようと思いました。
がんと向き合い生きていく