緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

「コロナ流行の元凶は無症状感染者」説が浮上…数々の警告が

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナの封じ込めが難しいのは、潜伏期間中に発病していない感染者がほかの人に感染させる場合があることだ。

 新型コロナウイルスの潜伏期間は人によってまちまちだが、平均して5日間程度とされ、1日から2週間と幅があるとされる。この期間は症状がなく、感染者は通常の活動をしている。ところが、こうした無症状感染者の中から会食やスポーツジムでの運動、ライブハウスなどでのイベントなどに参加することで集団感染をもたらした例が複数報告されている。「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「実は無症状感染者によるクラスターの発生は早い段階で各国から報告されており、医療関係者の間で話題になっていました。先月20日の医学誌『ネイチャー』は『隠れたコロナウイルス感染症が新たな流行の火種となる可能性がある』と題する文章を発表。新型コロナウイルス感染者のうち60%は無症状または症状が軽度である可能性があり、こうした無症状感染者が新たな流行を引き起こす恐れがあると警告していたのです」

 それを裏付ける研究成果をシンガポールの研究グループが2日に米国CDC(疾病対策センター)発行の報告書に発表している。シンガポールで発生した新型コロナウイルスの感染例について感染経路を詳しく検証したところ、7つの集団感染で自覚症状がない人からほかの人に感染したとみられる例が見つかったという。

「興味深いのは、報告された例のなかには歌の教室で感染が広がったケースが複数あり、研究チームは声を張り上げた際に出た飛沫に含まれるウイルスにより、感染した可能性があるとしている点です。空気感染ではないものの、エアロゾル感染が現実に起きている可能性があるのではないでしょうか」(林院長=以下同)

 エアロゾル感染とは、空気中でウイルスと液滴が混じって形成され、吸入すると感染が生じる状態のことを言う。

 2月上旬の中国・上海市政府の新型コロナに関する会見で言及されたが、翌日の中国疾病対策予防センターの会見で否定された。しかし、これほど無症状感染者による感染拡大の報告が増え、感染のハッキリした状況がわからない以上、エアロゾル感染についての可能性も検討してもいいのではないか。

「これまで無症状感染者はウイルスに感染している以上、理論的に人にうつす可能性はあるものの、ウイルス量と病状の程度には一定の相関性があり、無症状感染者は発症しても症状が軽いため、ウイルス量が少なく伝染力は弱いとされてきました。しかも、無症状感染者は咳やクシャミの症状が出ないため、病原体を体外に排出して感染させる確率は低いと考えられてきたのです。しかし、これほど無症状感染者による感染拡大の例が積み上がってくると、そうした考えは間違いである疑いが出てきたのです」

 もし、これが本当なら政府が中国の例をうのみにして無症状感染者を検査で見つけ出し、隔離する政策を取らなかったことが感染拡大を招いたことになる可能性がある。

「相当数の感染者がいると考えられる現在、いまさら政府が無症状感染者を探し出す検査を徹底したところで感染爆発は止められません。鍵を握るのは私たち一人一人が、無症状感染者ではないかと疑い、他人に感染させないよう行動するだけです。政府が声高に言う3密(密閉空間、密集、至近距離での会話=密接)禁止は、もはや個々人の良心に基づいた行動でしか感染を止められないということだと思います」

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