緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

若い感染者が急増しているのはウイルス強毒化が原因なのか

若くても危険
若くても危険(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症が報告された当初は、若い人や中年の人は高齢者に比べて感染しにくいとされてきた。ところが検査数が増すにつれ20~50代の感染者が目立つ。

 厚生労働省が発表する「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」(6日18時現在)によると、20代(陽性者639人、死亡0人=以下同)、30代(580人、0人)、40代(631人、1人)、50代(611人、4人)に対して60代(478人、6人)、70代(354人、31人)、80代(166人、29人)だ。同様の報告は世界各国でなされている。

 なぜ、若者の感染が増えているのか? ウイルスが強毒化したからなのか? 「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長が言う。

「ウイルスが急に強毒化したとは考えられません。致死率や感染者が何人にうつすかを示す基本再生産数が世界的に急上昇しているわけではないからです。今回の新型コロナウイルスは、2003年に流行した致死率の高いSARS(重症急性呼吸器症候群)と遺伝子が80%同じです。そのためSARSと同じで感染力は弱いが致死率は高いと信じられていました。そのせいでSARSと同じように感染して間もなく肺炎になる高齢者ばかりが注目され、若者に多い無症状感染者が無視された結果、『新型コロナ肺炎は高齢者の病気』のイメージがついたと考えられます」

 これに拍車をかけたのが、新型コロナウイルスの体内への侵入経路だ。SARSは下気道で感染して肺炎を起こす。一方、新型コロナウイルスはSARSと同じ「下気道」だけでなく「上気道」や「腸管」にも感染する。

「新型コロナウイルスは、SARSと同じようにACE2と呼ばれる酵素と結合することを足掛かりにして感染します。ただ近年は、細胞内に侵入して感染するには補助となる別の酵素が必要だとわかってきました。心臓にはACE2が多く存在するのに新型コロナウイルスは感染しないのはそのためです。その酵素がどこに多いかは人による。その結果、上気道に感染して臭覚や味覚を失った人、腸管に感染して下痢になった人は新型コロナ感染者とは気づかれない。そのことも若者が少ないといわれた理由でしょう」

 本来なら活動量が多く感染リスクが高いはずの若者の多くが重症化せず目立たないことも、少なく見える理由だったかもしれない。

「子供が重症化しない理由のひとつに、大人に比べて免疫組織が未熟で、サイトカインストームが起きにくいからだ、との説もあります」

 風邪をひくと乳幼児が重症化するが大人はそうはならない。ところが今回の新型コロナウイルスは真逆だ。乳幼児はひどくならず、大人は重症化する。その謎を解くカギが免疫組織の発達の違いにあるとの見方もあるという。

「多くの人は勘違いしていますが、ウイルスが引き起こす病気の多くは、ウイルスから身を守るための免疫組織が暴走することで自分自身にダメージを与え、発症するのです。つまり、肺組織が健康な若者は、感染に伴って発せられるサイトカインが大人に比べて少ないために感染しても大事に至らないというのです。仮説のひとつですが、支持している医療関係者は多いです」

 これが本当だとすると、免疫組織が完成するとされる乳幼児以降はサイトカインストームの餌食になる可能性があるということだ。年が若いから安全とは言えないことだけは確かだ。

【動画】新型コロナ対策で人体実験が行われている 上昌広

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