緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

ガイドラインにも記載 「血液浄化療法」は効果があるのか?

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 新型コロナウイルス感染症の治療といえば、アビガンといった抗ウイルス薬ばかり注目されるが他にも手はある。例えば「血液透析」や「血液吸着療法」といった「血液浄化療法」だ。新型コロナウイルスが体内に侵入すると、それを排除しようとして免疫組織が動きだす。その指令を出したり異物を攻撃したりするためのタンパク質がサイトカインだ。これが過剰に分泌されると全身の臓器にさまざまな悪影響を及ぼす。これを「サイトカインストーム」と呼ぶ。

「北品川藤クリニック」の石原藤樹院長が言う。

「血液浄化療法とは血液から有害なもの、不要なものを除去する治療法です。異常なサイトカインを取り除くのにも有効です。そのやり方はさまざまで透析、ろ過、吸着、分離などがあります。最もよく知られているのが慢性腎不全の患者さんに対する血液透析です。また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性の病気の患者さんには、余計な物質を表面に吸着する物質を血液内に通すことで血液をきれいにする血液吸着療法と呼ばれる方法が試されます」

 新型コロナウイルス感染症の患者に、この血液浄化療法が有効ではないか、というのだ。

 実際、中国の国家衛生健康委員会弁公庁などが先月3日に公開した「新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン」(試行第7版)で紹介されている。「炎症因子を除去し、『サイトカインストーム』をブロックすることにより、炎症反応による全身の損傷の軽減をはかる。重症、重篤患者のサイトカインストーム早期―中期の治療に適用できる」としている。

 日本では多臓器不全障害が起きる前段階で、血液浄化法による新型コロナウイルス感染症への治療例が報告されている。

 神奈川県内の病院では中等症と重症の3人の新型コロナ感染症の患者に対して行われ、2人の患者の救命に成功したという。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船して新型コロナウイルス感染症を発症した69歳の男性は、入院後に抗HIV薬のカレトラ、インフルエンザ治療薬のタミフルを投与。しかし、病状は安定せず肺機能の低下から酸素吸入へ。さらに急性腎不全を併発したため、血液ろ過透析とウイルス感染に伴うサイトカインストームに対して血液吸着療法を開始。その2日後には血圧、酸素状態、炎症反応も改善し、その10日後には退院したという。

 インフルエンザの疑いで受診して新型コロナ陽性が確定した56歳の男性はカレトラ、タミフルを投与したものの病状が改善しなかった。その後マクロライド系抗菌薬の投与に加えて血液吸着療法を実施、アビガンなども用いることで病状は安定し、入院11日目に退院した。

「正直、あらゆる手段を動員して病状を抑えようとしているため、血液浄化療法がどの程度効いたのか、評価することはできません。ただ、サイトカインストームに対しての治療効果は昔からいわれており、一定の効果はあると思います。ただし、この例にもあるように、新型コロナウイルス肺炎は単独の治療法で抑えられるものではなく、複数の治療法を適宜投じていかないと抑え込むことはできないようです」

 ちなみに同じようにさまざまな治療法に加えて「血液浄化療法」を行った87歳の男性は治療の甲斐なく亡くなっている。

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