緊急企画 新型コロナを正しく恐れる

医師が疑問を呈する コロナウイルス対策「行為の矛盾」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染症の急拡大でさまざまな工夫をしている人も多いはず。しかし、その中には医療関係者が首をかしげる矛盾した対策をしている人も少なくない。そこで公衆衛生にも詳しい岩室紳也医師に話を聞いた。

「予防対策の基本は、マスクを着用して3密(密閉、密集、密接)を避けることとされていますが、落とし穴は一番リスクが高い『接触感染』の意識が低下することです。マスクで3密さえ避ければ大丈夫と考えているので、感染している人の飛沫が付いたところに手で触れても気にしない。その手に付いたかもしれないウイルスを口、目、鼻の粘膜に届けてしまう人が目立ちます」

 例えば換気の悪い密閉空間を避けるためにタクシーの窓を全開にしているのに、乗車賃は現金で受け渡しする。密接した会話や発声を避けるために宅配便の荷物は直接受け取らずに玄関先に置いてもらったが、床に付着したウイルスには無関心――などだ。

「マスクの使い方にも矛盾があります。新型コロナは無症状感染者も感染源になっているとされています。マスクはウイルスを含んでいるかもしれない自分の飛沫を周辺にまき散らさないために役立ちます。しかし、マスクが自分の身を守る効果があると証明されてはいません。むしろ、マスクは正しく着けないと危険なこともあるのです。それは無意識のうちにマスクの表面を誰かの飛沫を触った可能性がある手で触り、付着したウイルスを吸い込む可能性があるからです。私に言わせれば、マスクを正しく使えていない人がマスクを使うのは社会のためだとアピールしているだけで、自分が感染してもいい、死んでもいいと思っている人としか思えません。自分が感染したら自分とつながりのある大切な人たちを感染させるかもしれない、という考えに至らない。これこそが問題だと思うのです」

 普段はしっかりと手洗いをしていながら食事前には手を洗わず、スマホをいじりながらハンバーガー店のフライドポテトを手づかみで口に運ぶ。

 トイレでの手洗いも矛盾に満ちた行動が目につくという。蛇口の栓をひねって手洗いをした後にその手で栓を閉める、手洗いの後、何度も使っているハンカチで手を拭く、ドアノブを触ってトイレを出るなどだ。

 ほかにも家にあるものはアルコール消毒していながら、バッグやリュック、荷物を電車やお店の床に直接置いて部屋の中に持ち込むなど、いずれも矛盾した行為と言わざるを得ないと岩室医師は言う。

「お客さんにマスクを着けさせていながら、そのまま食べる商品をむき出しで販売しているのもどうかと思います。また、手袋で商品を品出しするお店がありますが、手袋を着けた手で商品以外のところを触れば、素手と同じです。素手ならコマメに洗えばいいが、毎回使い捨てる手袋でない限り、ウイルスが付着したまま作業を続けることになります。私から言えば、これも矛盾した対策法です。大切なことは周りに迷惑をかけないためにもまずは自分が感染しないことであり、手にはウイルスが付いていると考えて、口や鼻に触れない、食べ物を直接手で触らないためにどうするかを自分自身で考え行動することです」

 3密禁止もマスクも人との距離を取るのも、無数にある新型コロナから身を守る手段に過ぎない。自分で考えずに答えだけを求めてばかりいるからこそ、矛盾した行動を取ることになる。新型コロナウイルスから身を守るためには自分の頭でよく考えることだ。

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