病気を近づけない体のメンテナンス

副腎<上>精神的なストレスは副腎疲労から体調を崩しやすい

(C)日刊ゲンダイ

 背骨を挟んで左右1つずつある腎臓の上に、ちょこんと乗っかるように位置する小さな三角形をした「副腎」。名称から腎臓の一部と勘違いされやすいが、腎臓の働き(泌尿器)とはまったく関係ない。ホルモンを分泌する「内分泌器」として独立した働きをしている。

 副腎は生命維持に不可欠な50種類以上のホルモンを分泌しているとされるが、主にストレスに対処する働きを持つものが多い。副腎は2層構造になっていて、外側の副腎皮質からは「コルチゾール」「アルドステロン」「DHEA」などのステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン)が分泌され、内側の副腎髄質からは「アドレナリン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」などのカテコールアミン(神経伝達物質)を分泌している。

 ストレスには、「精神的なもの」「肉体的なもの」「環境的なもの」などがある。これらは脳にとっては、すべて同じストレスとして認識される。脳がストレスをキャッチすると、脳から副腎に指令が伝達され、副腎はそのストレスに対抗してホルモンを分泌する。

 どのストレスも人間の体に炎症を起こし、健康にダメージを与えようとする。特に「ストレスホルモン」とも呼ばれるコルチゾールは、ストレスによる炎症を抑える手段として血糖値や血圧などをコントロールしたり、免疫機能や神経系なども瞬時に調節したりすることで、ストレスによる体へのダメージを防ぐ役割をしている。

 戦う相手のストレス要素が多すぎると、コルチゾールを浪費して、副腎は働きっぱなしになって疲れてしまう。副腎が疲弊するとストレスに対抗できずに体への悪影響から、慢性的な疲労感やうつ症状などさまざまな症状が出てくるのだ。

■寝起きが悪く甘いものが食べたくなったら危険

 副腎が疲弊した病態の「副腎疲労」に詳しい「スクエアクリニック」(川崎市幸区)の本間良子院長が言う。

「ストレスの中でも短期間の精神的ストレスはあまり心配いりません。つらい仕事の期日が決まっているストレスで先が見えるからです。副腎が疲労しやすいのは、今の新型コロナウイルスの流行のような期日、ゴールが見えない精神的ストレスです。高齢者の親の介護、子供の受験、人間関係などの精神的ストレスも自分ではコントロールできないので、副腎疲労の蓄積によって体調不良を起こす人が多くいます」

 副腎疲労も軽症、中等症、重症に分けられる。軽症は一時的なストレスを抱えている人でまだ自覚症状に乏しく、時間の経過とともに解消できる場合が多い。中等症はストレスが重く、副腎が必死にコルチゾールなどのホルモンを分泌して戦っている状態。いわゆる「抵抗期」だ。

 副腎は膵臓と同じく、異変があっても自覚症状が表れにくい「無言の臓器」で、副腎疲労になっていても健康診断の血液検査ではホルモン値は正常として判定されてしまう。しかし、中等症になると疑うポイントがいくつかあるという。

「副腎から分泌されるホルモンは、そもそも飢餓に対するストレスから身を守るためのもので、『血糖値や血圧を上げる』『脂質や水分をためる』などの作用があります。ですからホルモンを必死で分泌している中等症の人は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすい。また、通常なら朝4時から8時までに分泌がピークになるコルチゾールを温存しようとするので、朝起きられないようなことが起こります。それに甘い物やカフェインを多く取る傾向も見られます」

■特効薬は睡眠

 中等症なら食事や睡眠による副腎のケアで、軽症まで改善させることが可能という。環境的なストレスには、気温の暑さや寒さなどもあるが、食品に含まれる添加物や重金属などの化学的なものもある。食事に気をつけることで、体内に入ってくる化学的ストレスを減らすのだ。

「食事は、添加物の入っている加工品を食材にするのではなく、自宅で調理したものを食べるようにする。そして、体内の炎症を抑え、肝臓(解毒機能)をケアする薬味を取り入れてください。具体的には臭いの強い野菜。ニンニク、ネギ類、ニラ、シソ、パクチー、ショウガなどです」

 コルチゾールの材料となるビタミンB群を積極的に取ることも大切。玄米や豚肉、レバー、うなぎ、卵、魚介類などだ。できるだけ空腹に近い状態で寝る。消化・吸収が終わり、コルチゾールの分泌が抑えられている状態で副腎をしっかり休ませるのだ。何よりよく寝ることは、副腎の疲れを取る特効薬になるという。

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