Dr.中川 がんサバイバーの知恵

菅原文太もS・ジョブズも ピンピンころりとがんで死にたい

スティーブ・ジョブズ(左)と菅原文太(C)共同通信社

 日本人の理想の死生観は、「ピンピンころり」といわれます。亡くなる直前まで元気でピンピンしていて、あるときころりと逝くこと。死ぬことをあまり意識していないので、死の恐怖とは無縁です。

 しかし、新型コロナによる肺炎が重症化して息を引き取る場合はどうでしょうか。突然、隔離され、最愛の家族や仲間とも会えずに最期を迎えるのです。強い恐怖を感じるはず。その過程はピンピンころりでも、理想とは違います。

 その点、がんによる死はどうでしょうか。がんはピンピンころりとは逆に、少しずつ死に向かっていく病です。一番の特徴は、死期を予見できることにあります。がん専門医として多くの患者さんを診ていますが、もう治らないという段階になっても、多くは年単位の時間が残されています。がんは、「人生の仕上げの時間」を与えられる病気でもあるのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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