Dr.中川 がんサバイバーの知恵

菅原文太もS・ジョブズも ピンピンころりとがんで死にたい

スティーブ・ジョブズ(左)と菅原文太(C)共同通信社

 多くのがんは、末期まで症状が出にくく、きちんと病気をフォローしていれば、仕事や生活が妨げられることはありません。末期になると、症状のひとつとして痛みが出ますが、欧米のようにしっかりと医療用麻薬を使うと、痛みを最小限にすることができます。

 膀胱がんを患っていた俳優の菅原文太さんは私が陽子線治療をお勧めしたご縁もあり、6年前に息を引き取る1カ月前に夕食に誘っていただきました。痩せてはおられましたが、背筋を伸ばして食事されていた姿が印象的です。

 野球解説者の大沢啓二さんも私の患者さんでした。10年前に胆のうがんで亡くなるまでテレビ出演を続け、「あっぱれ」「喝!」と声をあげていたのは、皆さんもご存じでしょう。番組のキャスター・関口宏さんをはじめ共演者の方々も、大沢さんが末期がんとは、知らなかったそうです。

 尊敬するアップル社の創業者スティーブ・ジョブズもしかり。9年前にすい臓がんで息を引き取る前日まで仕事をしていたといいます。

 がんときちんと向き合えば、最期まで人生をまっとうできるのです。新型コロナの感染拡大で、改めて思います。ピンピンころりとがんで死にたい、と。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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