新型コロナで知っておきたいこと ウイルス・ゲノム学者に聞く

京都大学ウィルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授(左)と東海大学医学部の中川草講師(提供写真)

宮沢 必ずしも変異を繰り返せば病原性が強くなるのではありません。逆に弱くなるのが一般的です。ウイルスは宿主がいなければ生きられませんから、宿主に嫌われないよう変異しているのです。変異して強い病原性を持つウイルスは取り付く宿主を失って短期間で勢いを失います。病原性が弱いウイルスと共存する場合は、弱いウイルスが優位になることが多いのです。

【3】各地で変異が見つかっていて、さまざまな型が発表されていますが、その意味は?

中川 新型コロナウイルスがその塩基変異からS型、L型と2つに分類できて、L型が強毒化したウイルスだとの研究論文があり注目されました。この研究も実験的な検証がなく、さまざまな研究者からの反論を受けて、現在では論文の著者らもL型が「強毒化している」との表現は誤りだったと認め、論文は修正されました。他の研究グループもさまざまな型を独自に定義したりしていますが、現在のところ、新型コロナウイルスの突然変異による分類は、毒性の違いではなく、ウイルスの由来を示すものに過ぎないと考えられます。

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