コロナ患者激白「喉に金串が刺さったような耐え難い痛み」【拡大版】

飲食店経営の男性
飲食店経営の男性(提供写真)
52歳男性(都内飲食店経営)

 都内の病院に入院中の飲食店経営の男性(52)も感染経路がはっきりしない。「自分のお店か、雨の日にマスクをして仕方なく乗った電車か、数日前に行ったキャバクラでしょうね。キャバクラが一番怪しそうですが、店長からはコロナが出たとは聞いていないから違うかも。そうはいってもこの3つのどれかでしょうね」と振り返る。その闘病生活は地獄だった。

■2日間ベッドでのたうち回る

 体に異変を感じたのは、3月17日ごろです。それから微熱が続き、喉が腫れ、サバの骨の10倍ぐらいの太さの金串をのみ込み、喉に突き刺さっているほどの強烈な痛みを感じました。痛さで飲み物どころか唾さえのめません。次第に首の外側が腫れ、食欲が減退し、倦怠感に襲われ、睡眠導入剤を飲んでも痛さで眠れない日々が続きました。この頃が一番つらかったですね。

 寝ようにも背中をバットでボッコボコにブン殴られるぐらいの激痛に見舞われ、2日間、自宅のベッドの上でのたうち回りました。さすがに「もうダメだ」と思い、近所のクリニックを受診すると、「インフルエンザの疑いがあるが、検査は国から禁止されているので薬だけ出します。2日経って熱が下がらなければまた来てください」と言われ、インフルの薬と解熱剤を処方されました。しかし、苦しみに耐えられず、翌日、再受診しました。

 平熱35.8度の体温が38.6度まで跳ね上がり、血液検査とレントゲン検査の結果、白血球の数値が高く、肺に影が見つかりました。報告を受けた保健所から「すぐに病院に行ってください」と指示され、「歩いて病院に行かれますか」と聞かれました。「その病院は個室代が高いから他の病院でお願いしたい」と申し出たのですが、確か「入院費はかからない」と言われた気がします。頭も混乱していたからよく覚えていないです。

 病院までは徒歩10分の距離なので、歩いて行くことにしました。指示されていた通りに救急外来のインターホンで名前を言うと、話が通っていたみたいで、そのまま集中治療室(ICU)に行き血液検査と抗生剤入りの点滴治療が始まりました。その費用も、おそらくかからないのだと思います。寝間着やタオルはタダだからと言われましたし。おかげでそれからは耐えられる程度の痛みになりました。

 ただ、何か食べなければと思っても、口に入れられるのはせいぜいおにぎり1個。喉もカラカラに渇きます。突然、鼻血が出て止まらなくなり、ティッシュを詰め、苦しくなって外すと、またドバッと鼻血が流れ出す。その繰り返しです。鼻血が止まって鼻をかむと、血の塊が出てきます。そのうち鼻の中にかさぶたができました。

抗生剤入りの点滴治療が始まったが…(写真はイメージ)
抗生剤入りの点滴治療が始まったが…(写真はイメージ)
筋トレするぐらい元気でも陽性は変わらず

 約1週間、ICUで治療に専念し、4月2日、一般病棟に移りました。

 それから入院も3週間目になると、筋トレするくらいすこぶる順調です。しかし、まだ退院できません。PCR検査で2回続けて陰性が必要なのですが、私の場合、1回目の検査で陰性、2回目に陽性と出てしまい、3回目も陽性となってしまいました。

 罹患したばかりの頃は、PCR検査は中1日くらいで結果が分かったのですが、今では検査する人数が増えたせいか、結果が分かるまでに中5日ほどかかるようになりました。

 先々週の検査の結果はまだ出ていませんが、18日に病院を出て、ホテルに移動しました。結果が陰性ならホテルから出ることができます。ホテルでは朝夕の2度、自分で検温して電話で報告します。1日に1回、医療職の人が訪室するわけではありません。食事は館内アナウンスで知らされ、自分で1階に取りに行きます。

 感染が分かった時は、前日に陽性が判明していた母親に連絡しました。仕事を手伝ってもらっていた時に、うつしてしまったようです。母親もICUで治療を行っていましたが、幸い退院できました。

 最初は母の方が症状が重かったのですが、私も痛みにもがいてましたから、母の家に行ってあげることができなかった。それでタクシー会社に連絡して「病院に送ってやってくれ」って頼んだんです。救急車は思いつかなかったですね、あの頃は。

 お店はもともと1人でやっていたので、現在は休業しています。友達の物件を借りているので、家賃は免除してくれるんじゃないでしょうか。今はオフィスとして稼働させているみたいですし。退院したら再開します。

 今回、自分が想像を絶する苦しみを経験し、感染者だからこそ言えることがあります。誰一人として、同じようなつらい思いをして欲しくはありません。自分が外に出れば誰かにうつしてしまうかもしれない。それだけは絶対してはいけない。自分はうつらないとか、うつっても大したことないと思っている若い人たち、またその家族も、命の危険にさらされる可能性があることを知って欲しいと思います。

(取材協力=稲川美穂子)

※4月23日発売 日刊ゲンダイ「新型コロナ完全ガイド」より

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