病気を近づけない体のメンテナンス

副腎<下>カンジダ菌増殖による「リーキーガット」は怖い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 内分泌器である「副腎」は、主にストレスに対処する働きを持つ「コルチゾール」などのホルモンを分泌している。

 ストレスには、「精神的なもの」「肉体的なもの」「環境的なもの」があり、いずれも人間の体に炎症を起こし、健康にダメージを与えようとする。

 それに対してコルチゾールは、ストレスによる炎症を抑える手段として血糖値や血圧などをコントロールしたり、免疫機能や神経系を調節したりして、体へのダメージを防ぐ役割をしている。

 戦うストレス要素が多過ぎると、副腎は必死にコルチゾールを分泌しようと働きっぱなしになってしまう。

 副腎が疲弊(副腎疲労の状態)するとストレスに対抗できず、体への悪影響から、慢性的な疲労感やうつなど、さまざまな症状が出てくるのだ。

 副腎が疲弊してしまう原因のひとつには、肉体的ストレスとなる「腸のトラブル」が大きく関係している。副腎疲労に詳しい「スクエアクリニック」(川崎市幸区)の本間良子院長が言う。

「副腎疲労に至るプロセスは十人十色ですが、副腎疲労を起こしている人に共通するのはほぼ100%、腸に炎症を起こしていることです。副腎疲労の認知が広まっている米国では、重症度に関係なく、治療は必ず腸の炎症を抑える食生活の見直しから始まります。軽症の人は、それだけで治ってしまうケースが非常に多いのです」

 腸の炎症といっても、副腎疲労に関係するのは大腸ではなく、「小腸」の方。

 健康な人の場合、小腸にはほとんど菌がすんでいなくて、菌がたくさんすんでいるのは大腸だけとされてきた。しかし、最近では小腸にも少しの菌がいることが分かってきている。

 その常在菌のひとつである「カンジダ」が、副腎疲労の人は小腸の中で増殖していることが多いという。

「このカンジダが引き起こす病態が『リーキーガット(腸漏れ症候群)』です。腸粘膜、腸管壁を傷つけて、小腸の細胞と細胞の間に隙間ができてしまい、小腸内の菌や毒素、未消化の食べ物などが漏れ出てしまうのです。漏れ出た異物は血中に入り込むので、免疫機能による抗体ができ、その異物を攻撃して炎症が起こります。コルチゾールは腸粘膜などの傷つけられた組織の炎症や、抗体による攻撃の炎症を抑えることに大量に使われます。ですから、リーキーガットになると副腎が非常に疲れるのです」

■痛み止め、添加物も引き金

 カンジダなどの菌だけでなく、さまざまなストレス、痛み止めなどの薬、毒素、加工食品の添加物もリーキーガットの要因になるという。

 小腸に炎症を起こす病態には、もうひとつ「SIBO(シーボ=小腸内細菌増殖症)」もある。これは大腸内の菌が大増殖して、小腸に入り込んでしまうことで起こる。小腸の粘膜の炎症がひどくなるので、やはり大量のコルチゾールが消費される。また副腎の回復に不可欠なビタミンやミネラルの吸収が低下するので、ますます疲弊するのだ。

「お腹が張る」「腹痛が起こりやすい」「便秘や下痢をする」といった症状があれば、リーキーガットやSIBOの可能性があるという。

 その副腎のケアとなる食生活の見直しは、腸内の菌の餌となる糖分や炭水化物をなるべく取らないことがポイント。並行して、さまざまなストレス要素を遠ざけることも大切になる。

「小腸に炎症を起こす菌の最高の餌は『グルテン』です。小麦粉に水を加えて、こねると強い粘りを出しますが、あの粘りを作り出しているのがグルテンです。パン、うどん、ラーメンなどを漫然と常食するのはよくありません。また、白米のご飯は血糖値を急激に上げて、そのバランスを取るためにコルチゾールをたくさん使います。見直すことは、『主食は必ずしも食べなければならないものではない』ということです」

 腸の炎症を抑えて、傷ついた腸粘膜を修復する効果があるのが「オメガ3系のオイル」。不飽和脂肪酸の一種で、魚の脂肪(フィッシュオイル)や亜麻仁油、エゴマ油、しそ油など。ただし、酸化しやすく、加熱すると効果が減少するので、ドレッシングや野菜ジュースに混ぜるのがお勧めという。

 副腎がホルモンを代謝するのに必要な酵素の働きを助けるのは「マグネシウム」。大豆や納豆、味噌、貝類、海藻などに多く含まれる。ただし、カルシウムはマグネシウムを排出する作用がある。マグネシウム対カルシウムの摂取の割合は、1対1(健康な人は2対1)を目安にするといい。

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