まもなく臨床開始「回復者血漿療法」は新型コロナを殺すか

新型コロナウィルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)
新型コロナウィルスの電子顕微鏡写真(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 コロナ撃退の切り札となるか――。新型コロナウイルスをやっつけてくれる頼もしい味方が現れた。国立国際医療研究センターが23日に病院内の倫理委員会で承認を取った「回復者血漿療法」だ。まもなく臨床研究が開始される。

 新型コロナに関しては以前からワクチンの開発を切望する声が上がっている。ワクチンは感染症を起こさないように処理されたウイルスを、健康な人に注射して体内に抗体をつくらせる原理。いわば予防接種だが、開発に1年以上かかるといわれている。

 これに対して「血漿療法」は一度病気にかかって、その後回復した人の血液を遠心分離機にかけ、上澄みの血漿を患者の静脈に注射する。血漿の中にはガンマグロブリンというタンパク質があり、この物質に含まれる特異抗体がウイルスを殺してくれるのだ。ワクチンはウイルスを注射して体内で抗体をつくらせるが、血漿療法は抗体そのものを静脈注射する。

やっとドライブスルー方式も始まったが(写真は模擬検査)
やっとドライブスルー方式も始まったが(写真は模擬検査)/(C)共同通信社
50人の血漿を50人に投与

 よく耳にする「血清」は、血漿からさらに白血球を除いたもので原理は同じ。効果にそれほどの差はない。以前はマムシにかまれたときに、血清を投与した。最近話題の映画「感染列島」(2009年)ではウイルス感染で重篤な状態に陥った女子高生に最後の手段として血清を投与する場面が出てくる。

 国立国際医療研究センターは回復した人約50人から1人400ミリリットルの血液の提供を受け、血漿を患者50人に投与して安全性や効果を調べる方針だ。

 ハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏はこう言う。

「血漿は投与したらすぐに体内でウイルスと戦い始めます。同じ原理の破傷風の血清療法の場合は1時間以内に効果が表れます。今でもハブにかまれた際の治療として行われ、すぐにやるとほぼ助かります。今回の血漿療法はかなりの効果が期待できると思われます。効果の有無は投与して数日で分かるはずです」

 血漿は患者への投与だけでなく、健康な人への予防薬としても使える。ただし、取り扱いに手間がかかるそうだ。

「ワクチンは小型アンプルの状態で保存できますが、血漿は変質しやすいので冷凍保存し、解凍してから注射することになります。そのため予防にはあまり使いません」(左門新氏)

 血漿療法の臨床試験が成功したら、危険な状態の患者の命が助かる可能性がある。一刻も早く実用化してもらいたい。

関連記事