歯周病が原因?6つの病気と予防法 早い人は生後6カ月から

 食事に気を配る、体を動かす、よく寝る……。どんなに健康に気をつけても50歳を越えると、ほとんどの人は歯周病になる。それは意外な病気を引き起こすという。東京歯科大学口腔科学研究センターの三浦直准教授に話を聞いた。

■インプラントもご用心

 歯周病や歯科インプラントを研究している三浦准教授は、白衣の胸ポケットに赤、黒のボールペンと一緒に歯ブラシも入れている。

 歯磨きは朝夕に限らない。勤務先でも、食後にいつでも歯をブラッシングできる習慣を身に付けている。

 通常、口の中には約500~700種類の細菌がすみ、食後などにこれら細菌の一部が歯の周囲に付着することがある。

 これをプラーク(歯垢)といい、このプラーク1ミリグラムの中には、およそ1億~10億個の細菌があるといわれている。

 状態が進行すると、さらに歯と歯肉の境目の「歯周ポケット」が深くなり、歯を支えている骨(歯槽骨)までを溶かすことがある。これが歯周病だ。最悪、抜歯に至るケースもある。

「歯周病は不治の病ともいわれました。でもこの15年ほどで、歯周病の予防や治療研究は目覚ましく進歩しましたね」

 歯周病は早い人で、生後6カ月くらいから始まる。歯周病原菌を持つ保護者が口に含んだ食べ物を赤ちゃんに食べさせたとき、歯周病原菌も同時に口の中に入り込んでしまうのが原因だ。

 厚生労働省(「歯科疾患実態調査」2016年の統計)によると、15、16歳から歯周病が顕著になり、ピークは60代である。

 若年者や妊婦に発症する歯周病もあるが、「まず50歳以上の人なら、ほとんどが歯周病にかかっていると言ってよろしいでしょう」という。

 歯周病の怖さは、口臭や歯肉の破壊、歯槽骨まで溶かすだけではない。さまざまな病気も誘発させることにあるという。

 例えば、①肺炎②心臓病③糖尿病④骨粗しょう症⑤早産⑥バージャー病(手足末端の血管が詰まり、炎症を起こして皮膚に痛みや潰瘍を起こす)などの病気と、歯周病との関係が強く疑われているからだ。

 動脈硬化症や大動脈瘤罹患者の細胞を検査すると、数多くの歯周病関連菌(Pg菌=ポルフィロモナス・ジンジバリス)が検出されている。

 身近な例をもうひとつ挙げれば、歯の治療で第3の治療法といわれる「インプラント」に付着する歯周病原菌だ。これは、最近問題視されてきた。      顎の骨の中で、歯のない部位にインプラントを埋め込み、そこに土台(アバットメント)と、上部構造といわれる上物をつけるのがインプラントの典型的な治療である。

「しかし、歯周病原菌は歯や歯肉に限らず、チタン合金からなるインプラントにも付着することがあります。こうなると、メンテナンスが少し厄介になり、最悪の場合、インプラント自体が使えなくなるケースもあります。詳細はまだ不明ですが、歯周病原菌と誤嚥性肺炎の関係が浮上しています。罹患者の肺から、『嫌気性グラム陰性桿菌』という歯周病原菌が高い頻度で見つかっているからです」

■新型コロナの重症化も防ぐ可能性

 目下、世界中を震撼させている新型コロナウイルスに感染し、多くの人が肺炎で命を落としている。口の中(口腔内)をきれいにすることで、新型コロナウイルスの重症化を防ぐことができるかもしれない。

 世界で一番多い病気として「ギネスブック」にも載っている歯周病。残念なことに特効薬はまだない。

 歯肉炎症の対症療法を目的とした医薬品はある。だが、症状が重篤化し、薄いピンク色の歯肉が赤紫色になって腫れ、歯磨きのたびに出血するようになると、治療が難しくなる。

 主な治療法は、歯周病原菌を含むプラークの除去。前述の「歯周ポケット」(深さ4・00ミリ以上)に蓄積した歯周病原菌を取り除くという処置になる。

 こうした歯周病原菌を予防する基本対策は何か?

「歯周病の予防は可能です。そのためには、まず毎日、歯の表裏や歯と歯肉の境目も丁寧に磨くこと。歯間ブラシやデンタルフロスを補助的に利用するのも効果的です。または定期的に歯科医を訪ねて、プロに口の中をクリーニングしてもらうことや、汚れの付き具合を診てもらい、正しい歯の磨き方の指導を受けることです」

 すぐにでも対策したい。

関連記事