病の克服は患者に聞け

新型コロナ<1>辛い麻婆豆腐を食べても全く味が感じられず

実業家の渡辺一誠さん
実業家の渡辺一誠さん(提供写真)

 猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。4月末現在、国内で、感染確認者数が1万4000人、死者数は400人を超えた。

「もしかしたら私も」と、感染に怯える人たちも少なくない。

 東京・港区に事務所を構えるコンサルタント会社経営の渡辺一誠さん(40)が異変を感じたのは3月22日(日曜日)の朝。港区六本木の事務所に出勤し、近所の書店を訪ねたときだったという。

「このとき、体に何かいつもと違う、風邪のひき始めみたいな不快感を覚えました」

 大事をとって渡辺さんは、当日昼の食事をキャンセル。自宅に戻り「在宅ワーク」に切り替えた。

 風邪をひくと、いつも鼻水が出て鼻づまりが起こり、寝づらい症状になる。しかし、鼻水は出なかった。

 それでも渡辺さんは風邪をひいたときに行う室温を上げ、たくさん食べ、厚着して汗を大量にかく独自の自宅療法を始めた。ところが、いつもと違って何をしても体が熱くならない。汗がまったく出ない。

 さらに翌月曜日から症状はどんどん悪化していった。咳は出ないが、キツイ頭痛がある。問題は体温だった。朝、体温を測ると、36・5度の平熱だが11時ごろになると、どんどん熱が上がる。夜になると、39・5度の高熱を記録してしまう。

「こうした症状が4日ほど続き、私は当初、インフルエンザの感染を疑ったのです。しかし、連日の新型コロナウイルス報道を見聞していて、感染した症状の知識も得ておりました。私の周囲に年配の方もおり、もし新型コロナで感染させたら申し訳ない。検査を受けようと考えたのです」

 検査を受けるため最初に、会社の所在地と同じ港区内の某病院に電話をかけて症状を訴えた。ところがその答えは驚くべきものだった。

「来ていただくのは結構ですが、うちではコロナの検査はできません。保健所に連絡してみてください」

 仕方なく同区内の保健所に電話を入れた。保健所から病院を紹介され、急いで訪ねる。受付で外来用紙に記入し、待合室で、診察の順番を待つこと2時間。しびれを切らして受付で診察の時間を尋ねると、「まだ時間がかかります。どうしますか?」。

 待合室でおしゃべりを楽しんでいる患者さんを横目にしながら、渡辺さんは病院の玄関を出たという。

 コロナ検査が思うように進まない苛立ちを抑えることもあり、その足で中華屋に入る。

 メチャクチャ唐辛子が効いたような麻婆豆腐を食べたが、いつもと違って全く味が感じられなかった――。

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