進化する糖尿病治療法

在宅勤務でも体重と血糖コントロールが良好な人の共通点

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 患者さんを診ていて、外出自粛や在宅勤務で活動量が減少傾向にある今の状況で、思ったほど血糖コントロールが悪くなっていない人がいます。お話を伺うと、共通点として「犬の散歩」などストレスの少ない運動の実践がありました。

 糖尿病歴3年になる埼玉県在住の50代の男性は、3月末から在宅勤務が主とのこと。とくに意識して運動に励んでいるわけではないのに、体重も変動なく、血糖コントロールも良好です。

 ただ、朝晩、犬の散歩をしているとのこと。大型犬なので、朝晩それぞれ30~60分、距離にして2~4キロほど歩いているそうです。在宅勤務になる前は、別のご家族が散歩を担当。この男性自身はデスクワークが中心で、特に運動習慣がないので、「通勤していた時よりも、今の方が歩数は多いかもしれない」と言います。

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 人が比較的少ない早朝や夕食時を狙っての犬の散歩はことのほか楽しく、「早朝は空気がおいしい。また、長年住んでいるのに、会社と家の往復だけでは気づいていなかった小道や、花が咲いている場所を見つけるなどして新鮮。従来の勤務スタイルに戻っても、晩はともかく、朝だけは自分が犬の散歩を担当しようかな、と思った」と男性。これを機に、犬の散歩という運動習慣が身につけばいいな、と感じました。

 仕事上の会食や同僚らとの飲み会が一切なくなって出費が減り、銀行のATMへ行く回数が激減したと話すのは、東京都在住の40代の男性。

 お酒は好きだけど自宅ではもともとお酒を飲まないようにしているので、酒量も激減。妻や子どもたちと3食、規則正しい食事をするようになり、体重も落ちたそうです。活動量が減ったことで食欲も落ち、食べる量が通常より減っていることも体重減と関係しているそう。

 さらに、自宅の食事で気づいたのは、「会食がないことの快適さ」。朝起きたときに前夜のお酒が残っておらず、スッキリ。胃もたれもないので、朝食がおいしい。

 夕食も、甘辛酸っぱさが程よい内容のメニューを、程よい量、程よい時間に食べ終えることができる。お腹がいっぱいだけど、仕事相手に気遣って食べ続けなくていい。コース料理のようなこってりした味付けや脂肪分多めの食材ではない、普通の食事が続くことのありがたさをしみじみ感じているそうです。

■お酒は時間を決めて飲むように

 50代の東京23区内に住む女性は、飲食店応援のために、昼食はテークアウトをするようにしているとのこと。コロナ対策で電車やバスはあまり使わないようにしており、歩いて店に出掛けるそうですが、聞くと、結構な量歩いていました。1駅、2駅くらいはざら、日によっては片道40分ほど歩いて気になる店に出掛けると言います。

 会社でのランチは、歩いて数分のコンビニなどでサンドイッチやおにぎりを買ってきて済ませていたので、先に紹介した犬の散歩が日課になった男性と同様、在宅勤務以降の方が歩数が増えているそうです。

 テークアウト続きではカロリーオーバーが気になるところですが、ご飯の量は3分の1にして残りは冷凍したり、作り置きの煮物などと合わせて食べ、テークアウト分で残ったものは夕食に回しているとのことでしたから、カロリーの点も十分にコントロールできていました。

「目的もなく歩くのは苦痛でしかないけれど、おいしいものをテークアウトできるということと、お店に出掛けることが飲食店応援につながるかな、と思うと、40分歩いても苦じゃない。今度行こうと思っている店は片道1時間ほどかかりそうなので、休日に実行しようと思っています」と女性。

 在宅勤務で太りがちになるところを、うまく対処できているのは、本当にいいことだと思います。それに関連して、最近気になっているのが、アルコール摂取量の増加。自宅で飲むため、終電を気にせずに深夜までダラダラ飲んでしまう、オンライン飲み会で飲みすぎてしまう、退屈さを紛らわすためにお酒を昼から飲んでしまう……。

 アルコール量が、かつてよりかなり増えたという話もよく聞きます。早い時間から飲み始めればそれだけ酒量も増えるでしょうから、時間を決めて飲むようにする。炭酸水などでごまかす。さまざまな工夫で、知らないうちに酒量が増えていたとはならないようにしてほしいと思います。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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