がんと向き合い生きていく

新型コロナに注意しながらがん治療をどう受ければいいのか

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 A病院内科のK医師からメールが届きました。

「がん治療中にコロナウイルス感染で肺炎となって入院された患者さんがおられます。肺炎がよくなって化学療法ができる状態まで回復するように頑張っています。コロナ流行の状況では、がん治療を変更せざるを得ない患者さんがいらっしゃいます」

 4月14日、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部から都道府県に対して通達がありました。

 ◇  ◇  ◇ 

 がん患者(中略)への対応について、別添のとおりまとめましたので、各都道府県におかれましては、関係部局とともに、協議会等で早急にご検討いただきますよう、お願いいたします。

①がん治療を受けているがん患者が新型コロナウイルス感染症に罹患した場合には、重症化する可能性を念頭に置き、がん治療を中断し、新型コロナウイルス感染症に対応した医療機関への入院を原則とする。ただし、がん治療の術後等で、患者を新型コロナウイルス感染症に対応した医療機関に搬送することが医学的に難しい状態である場合には、当該医療機関での院内感染対策を講じた上で当該医療機関での治療について検討を行う。

②がん患者がかかりつけではない医療機関に新型コロナウイルス感染症の治療目的で入院した場合には、患者のがん治療の主治医と連携し治療を行うこととする。

 ◇  ◇  ◇ 

 日本臨床腫瘍学会は、がん患者に対して「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」(4月20日更新)を公表しています。この中の「4.がんの治療をどのように受ければ良いですか?」について、ここでは紙面の都合でその一部を紹介します。誤解されませんように、詳しくは学会ホームページをぜひご覧ください。

■通院を減らすため治療の変更も

 ◇  ◇  ◇ 

 がんの病状と新型コロナ肺炎ウイルスの感染リスクの程度により考えますが、基本的には以下の通りです。担当医の先生とよく話し合ってください。

1)がんが疑われる場合にがん診断のための検査はどうしますか?

・前述の症状(「1.新型コロナウイルス感染症について」に記載)が無ければ、予定通り検査を受けてください。非常事態宣言の地域や感染リスクの高い地域では、2~4週検査の延期を考えることができます。

2)新たにがんと診断された患者さんでは、手術を受けたほうが良いですか?

・遅延無く、手術が行われるべきです。同様に、術前の化学療法が行われた患者さんも、遅延無く手術が行われるべきです。

 (略)

3)術後の化学療法は行うべきですか?

・手術結果において再発リスクが高い患者さん(ハイリスク症例)や中等度の患者さん、とくにハイリスク症例では化学療法が行われるべきであると考えられます。

 (略)

4)化学放射線療法は続けるべきでしょうか?

・(前略)通常は根治を目指しているので、続けるべきです。

5)化学療法は続けるべきでしょうか?

・がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けるべきであると考えられます。場合によっては、治療プロトコールを(中略)変更する、可能であれば点滴治療から内服薬に変更する、など受診回数を減らすことが考慮されます。

 (略)

6)維持療法は続けるべきでしょうか?

・がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けることが考慮されます。

 (略)

 ◇  ◇  ◇ 

 この指針は、これから変わる可能性があります。また、これはあくまでも一般的な場合で、一人一人の患者さんの状況は異なります。ぜひ担当医とよく相談されるようにお願いいたします。近く、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会合同の指針が出る予定です。

 がん患者さんにとってはとても不安な日々と思います。大変な状況ですが、ぜひ、がんもコロナも克服しましょう。

■本コラム書籍「がんと向き合い生きていく」(セブン&アイ出版)好評発売中

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事