研究33年ウイルス学者が語る新型コロナ

すべての起源は動物だが…人間のウイルスはどこから来たか

牛にもコロナウイルスは存在する

 ヒトに感染するこれらのウイルスは、すべて動物からやってきたと考えられる。どの動物からやってきたかは、これらのウイルスに遺伝的に近縁のウイルスがどの動物に存在するか調べることで、推定することができる。それを調べる方法が「系統樹解析」と呼ばれる手法である。

 系統樹解析を行うと驚くべきことがわかる。ヒト腸内コロナウイルスとOC43に近縁なウイルスは、ウシやシカ、イヌに存在する。229Eに近縁のウイルスはラクダに、NL63に近縁のウイルスはコウモリに存在する。これらの動物からヒトに感染することで、ヒトのコロナウイルスとなったと考えられる。

 2003年以降に出現したコロナウイルスであるSARSコロナウイルス1型、MERSコロナウイルス、SARS―COV―2に近縁なウイルスは、コウモリに存在し、コウモリから直接、あるいは、他の中間動物を介してヒトに感染したと思われる。

 我々はコロナウイルスに包囲されており、新型コロナウイルスはヒトに出現し続けるのである。

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宮沢孝幸

宮沢孝幸

京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野准教授。日本獣医学会賞、ヤンソン賞などを受賞。小動物ウイルス病研究会、副会長。

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