上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓にトラブルを抱えている人は肺炎にかかり重症化しやすい

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

「肺炎」がこれまで以上に注視されています。2011年から16年まで日本人の死亡原因の3位だった病気ですが、新型コロナウイルスによる重症肺炎で亡くなる人が相次いでいることでさらにクローズアップされている状況です。

 そもそも肺と心臓は“セット”といえる臓器ですから、肺炎は心臓疾患とも深く関係しています。心臓は血液を全身に送り出す働きがあり、全身に酸素や栄養を届けています。全身から不要な二酸化炭素や老廃物を受け取った血液(静脈血)は、心臓に戻った後で肺に送られ、二酸化炭素と酸素の交換が行われます。肺でガス交換を終えた新鮮な血液(動脈血)は再び心臓に戻り、全身に送られるのです。いずれも血液を循環させるために欠かせない役割を担っているわけですから、どちらかでトラブルが起これば互いに悪影響を与えます。

 とりわけ、心不全などで心臓の働きが落ちている場合、肺炎になりやすくなります。心臓のポンプ機能が衰えると、肺から心臓に血液を送る際にそれだけ大きな力が必要になり、肺静脈の血圧が高くなります。すると、肺にうっ血(むくみ)が起こり、細菌やウイルスが繁殖しやすくなるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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