その後はパーキンソン病を患っていたこともあって次第に歩くことが困難になり、転ぶ回数も増えていった。
食欲は減退し、配食サービスの食事も口にしない。衰弱している様子もうかがえる。最期はそう遠くないだろうと思われた。
「ある日、ヘルパーが訪問すると、内側からチェーンがかかったままで返事がない。慌ててレスキュー隊を要請して家に入ると、彼女はベッドの脇に倒れていました」
救急車で病院に搬送されれば、救命措置が行われる。そうなると、希望する最期を迎えられないかもしれない。
しかし、レスキューの人たちからすれば、倒れている女性を放置することもできず、そのまま堀ノ内病院に搬送された。
「体調が少し戻ったら早めに退院させて、セピア色の世界に戻すのが最善」と小堀さんは考えていたが、本人は違った。
死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期