一方で、積極的な治療を受けないことを選択し最期を迎える人もいる。8年間、週3回の透析を受けていた94歳の女性は、1回あたり数時間の治療が苦痛だった。
「最後の数年は透析に通うのが嫌だと泣いていました。その長男も透析の中止を強く希望され、何度も話し合いを続けた結果、2人の意思を尊重する決断をしました」
2週間後、彼女は帰らぬ人となった。
それまでは毎日、禁忌となっていた好物のグレープフルーツジュースをおいしそうに飲んでいたという。
「医療に正解はありません。さまざまな形があるのです」
それだけに、どう判断して決断するのかは、誰にとっても難しい選択になる。
死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期