米国マウントサイナイ病院では、50歳未満の軽症のCOVID―19患者から、脳梗塞を併発した症例が2週間で5人も出た。
このように若く動脈硬化症が見られない人に急性心筋梗塞や脳梗塞が起こる原因は、血管炎による血栓か、血管の病気に無関係な血栓によるものと考えられる。
COVID―19血栓症の血液検査では、血小板減少により、D―ダイマー(血栓が溶けてできるもの)の上昇、血液の固まりやすさを示す活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とプロトロンビン時間の延長が認められる。特に、D―ダイマー上昇は重要で中国の症例では約半分に上昇が見られたとされ、入院時にかなり高めの患者は死亡リスクが約18倍高かったといわれている。また、PT延長も死亡リスクと関係すると報告されている。
今年3月、ついに国際止血血栓学会は、COVID―19患者には症状の軽重を問わず、血小板、D―ダイマー、PT、フィブリノーゲンのチェックを推奨するに至った。特にD―ダイマーの上昇は、静脈血栓塞栓症を疑い、心臓や下肢静脈の超音波検査を考慮する必要がある。MRIによる脳梗塞や血栓症のチェックも欠かせない。血液検査と画像診断の組み合わせで、血栓症と血管炎の正確な診断が可能となる。
重症のCOVID―19患者では新規抗凝固薬エドキサバンなどによる予防的抗凝固療法が合理的と思われる。低分子ヘパリンなどの抗凝固薬や血栓溶解薬で治療されるが、抗血栓剤の効果は限定的で、現病の治療が重要である。