研究33年ウイルス学者が語る新型コロナ

免疫の不思議…期待に反し抗体が感染を助長することがある

武漢の病院で治療にあたる医療関係者(C)共同通信社

 厄介なことに、コロナウイルスの場合、液性免疫(抗体)が効かないことがある。特にネコのコロナウイルスでは、抗体が感染を助長してしまう抗体依存性感染増強(ADE)現象が知られている。新型コロナウイルスがADE現象を引き起こすかどうかはいまだわからないが、新型コロナウイルスに近縁のSARSコロナウイルスでは、その現象が起こり得ることが知られている。これまでの研究成果を見る限り、液性免疫の他に細胞性免疫が重要な役割を果たしていることは確からしいが、個人差も大きいと考えられる。

 多くの人が新型コロナウイルスから回復していることから、獲得免疫が適切に発動すれば、このウイルスに打ち勝つと考えられる。しかし、回復機構には、不明な点が多く、今後の解析が必要である。回復機構の解明はワクチンの開発とその実施に大きな影響を及ぼす。しかし私たちには、回復機構を解明するための時間が極めて短い。

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宮沢孝幸

宮沢孝幸

京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野准教授。日本獣医学会賞、ヤンソン賞などを受賞。小動物ウイルス病研究会、副会長。

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