研究33年ウイルス学者が語る新型コロナ

出口戦略には必要だが…ウイルス検査の限界と問題点

PCR検査は今のところ30~70%の検出感度といわれている(C)共同通信社

 一方、抗体検査は、感染初期に誘導されるウイルス特異的IgMと、それに引き続いて誘導されるウイルス特異的IgGを検出する。しかし、感染初期に一時的に上昇するIgMでも、検出されるまでに感染後7日以上かかることが多い。IgGは回復者も陽性になるので、現在感染しているのか、過去に感染したのか区別はつかない。

 さまざまな簡易抗体検査キットが販売されているが、多くは、抗体を検出する感度が不明である。また、他のヒトコロナウイルスに対する抗体が反応(交差反応)したり、まったく関係のない抗原に対する抗体が反応(非特異反応)する可能性があり、一定程度、偽陽性が認められる。

 抗体検査は集団中にウイルス感染者(既感染者を含む)がどれほどいるか調べることには有効で、出口戦略を決定する上で重要であるが、偽陽性率と検出感度を事前に精査する必要がある。

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宮沢孝幸

宮沢孝幸

京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野准教授。日本獣医学会賞、ヤンソン賞などを受賞。小動物ウイルス病研究会、副会長。

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