この2年間、Gさんはずっと2カ月に1回のペースで通院しています。病院では腫瘍内科の診察室前で順番が来るのを待つのですが、同じように待つ患者がいつも数人います。まったく会わなくなった患者、会わないなと思っていたら再び顔を合わせる患者もいます。
その中でも、Gさんが気になった人がいました。たぶんGさんと同じ年代で、身長170センチくらい、眉毛が太く、くちびるが厚いブスッとした男性です。時に、そのギョロッとした目とGさんの目が合ってしまうのです。
同じ腫瘍内科に通っているのですから、がん患者に違いありません。きっと向こうもGさんの顔を覚えていると思いますが、一度も声をかけたことも、かけられたこともありません。「Jさん」と呼ばれて診察室に入っていったので、Jという名前なのでしょう。特に何があってというわけではないのですが、なぜか、このJさんがGさんの心に留まっていました。
がんと向き合い生きていく