もちろん、そんな外来での出来事は、自宅に帰ればすっかり忘れてしまいます。山と庭、畑を見れば、まったく違う自然の世界に浸れるのです。
■がん患者はハイリスク
前回、外来に訪れた頃から新型コロナウイルスが流行していて、テレビのニュースではこんな田舎村の近くでも陽性者が数人出たと報じられていました。コロナで亡くなった人の話を聞くと、Gさんは「がん患者は感染のハイリスク、がんで死ぬか、コロナで死ぬか?人間たかだか100年。考えたって仕方ないかも」と思ったり、「死んだら甥っ子にこの家と畑を継がせるか、村にあげてしまうか」などと漠然と考えたりしていました。
診察の予約日になって、GさんはまたN病院に出かけました。マスクを着けて電車に乗り込むと、乗客は皆マスクをしています。車内では話し声ひとつ聞こえず、次の駅名を告げる車内放送だけが響いていました。
がんと向き合い生きていく