独白 愉快な“病人”たち

ナナフシギ大赤見展彦「レストレスレッグス症候群」を語る

大赤見展彦さん(C)日刊ゲンダイ

「おまえ、寝てるとき、わざとか! ぐらいの勢いで脚が痙攣してるで」

 中学生のとき友人の家に泊まった翌朝、そう言われたのが最初でした。当時は無自覚でしたが、それをきっかけに意識するようになりました。

「レストレスレッグス症候群」は「むずむず脚症候群」ともいわれ、脚の深部を虫が這いずり回るような異常な感覚によって脚を動かしたい衝動が起こり、睡眠や生活に支障を来す病気です。睡眠専門の病院に行ってきちんと病名が分かったのは、ほんの2年前ぐらいのことです。

 如実に症状を自覚するようになったのは、高校の通学で電車やバスに乗り始めてからでした。じっと座っていると、つま先ぐらいからひどいと背中の肩甲骨の辺りまでむずむずするんです。脚の中に虫がいて何往復もされるような感覚です。かゆいとも違うし、痛いとも違う。一言でいえば「気持ちが悪い」。

 特に座っている座席の前に人が立っているときや、混雑して身動きが取れない状況でその症状は表れます。テスト中や全校集会でじっと座っていなければいけないときも本当にしんどかった。あまりにひどいので、親に病院に行きたいと訴えたこともありました。でも「気にし過ぎちゃうか?なんでそんなことで病院行かなあかんの?」と取り合ってもらえませんでした。

 就寝中の脚の痙攣を親が目撃していたら少しは違ったのかもしれませんが、毎日起こるわけではないし、一人部屋だったので状態が伝わりません。風邪をひいて町医者を受診したついでに相談しても、「そんなこともあるよ」と医師からもスルーされました。

 20歳になってこの世界に入ると、症状が絶対に表れるパターンがいくつかわかってきました。一番はお酒を飲んでいるときで、狭い居酒屋に詰め込まれたときなどは最悪です。そして、座席の足元が狭い映画館もダメ。新幹線や飛行機といった乗り物もそうですが、じっとしているとだいたい20分ぐらいで症状が始まります。座席がクルクル回る丸いバーカウンターチェアなんかは、座って10分でダメです。

 夜はウトウトするとむずむずが始まり、だいたい寝付けません。夜中に2~3回家の中を歩き回ることも日常茶飯事。まれに僕が熟睡できたとしても、脚は勝手に痙攣するので奥さんを起こしてしまうのです。それを理解して結婚してくれたのですが、子供が生まれて慣れない子育てが始まると、さすがにガマンが限界を超えたみたいで、ある日、「ちゃんと検査に行って!」と怒られてしまいました。

■「治らない」と告げられ今でも不眠は続く

 そんなわけで病院に行ったのが約2年前です。都内の睡眠専門クリニックで1日検査入院をしました。

 脳波と筋肉の動きを測る検査で、全身にいくつもの電極をペタペタ張られて「じゃ、これで朝まで寝てください」と言われるんです。

 始まる前から「無理」と思ったのですが、案の定まったく眠れず、夜中にどうにも気持ちが悪くなって外してもらいました。結果、「重めのレストレスレッグス症候群」と診断され、「治らない」と告げられました。

 この病気は、鉄分不足やドーパミンという神経伝達物質の不足で起こることがあります。でも、僕の場合は「両方ともたっぷりある」ということで、原因はまったくの不明。薬が処方されたのですが、1カ月分が5000円近くするので3カ月でやめてしまって、それ以来、病院には行っていません。

 薬を飲むと夜の寝つきは少し良くなります。でも、代わりに痙攣の時間が長くなり、ひどいと30秒もブルブルが続く。「人を起こしておいて自分だけグウグウ寝ている」と奥さんからも評判が悪く、「治らないならもういいか」と思ったのです。

 なので、ず~っと不眠は続いています。こんな職業で、友人もいっぱいいるので明るくしゃべれていますけど、普通のサラリーマンだったら不眠と通勤でうつになると思います。実際、そういう人もいると聞きますよ。 積極的にしゃべっている間とか、出番前で緊張しているときは、じっとしていてもむずむずしないんです。あと、車の運転時も大丈夫。自分の意識が違うところで働いている状況では大丈夫な感じです。

 一番気持ちよく眠れるのは、整体でマッサージされているときですね。子供が生まれる前までは奥さんに脚を強く揉んでもらいながら寝落ちするのが至福の時でしたが、今はそれも無理なので、ホント万年睡眠不足。2018年に「ザ!世界仰天ニュース」でむずむず脚症候群芸人として出演したあと、ありがたいことに視聴者の方からSNSでたくさんアドバイスをいただきました。でも、「もう全部やっとるわ!」でしたね(笑い)。

 唯一の解決策だと思うのは、お金持ちになって、マッサージ師を山ほど雇って常に足を揉んでもらうことですかね。でも現実は真逆。ベッドに奥さんと子供たちがいて、僕はひとり、床に布団で寝ています。

(聞き手=松永詠美子)

▽おおあかみ・のぶひこ 1979年、大阪府生まれ。2000年、学生時代の友人と組んだお笑いコンビ「ヴィンテージ」でデビュー。17年に解散し、翌年8月から吉田一人と「ナナフシギ」を結成し、現在に至る。父親が元僧侶で、自身にも心霊体験が多数あることから、その憑依体質を生かし怪談や霊感にまつわる話題を中心に活動している。現在、オカルトに特化したユーチューブチャンネルを配信している。

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