死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期

自分らしい最期を迎えるために死をイメージする

小堀鷗一郎医師(C)日刊ゲンダイ

 その結果、胃ろうで直接お腹に栄養を入れるようにして、何年も意識がないまま寝たきりで過ごすというケースもある。これは患者やその家族にとって最善の死に方とは限らないだろう。

 とはいえ、どんなケースでも点滴をしないことが正解とも言えない。

「なかには点滴で復活を果たす人もいます。だから、そこの判断を誤ってはならないのですが、年齢を基準に線を引けるものでもないので難しい。たとえ患者が90歳であっても延命治療をしないと決めるのは危険です。実際、ある若い医師が患者の年齢から治療は負担になると判断したのですが、それを容認できなかった家族が別の病院に連れて行き入院加療をしたら、容体が回復したこともありました」

「救命・根治・延命」を第一に考える「生かす治療」と、自然に委ねる「死なせる医療」のターニングポイントは、医者ですら見分けるのが難しいのだ。それだけに重要になるのが「自分はどうしたいのか」である。健康なうちから自分の死をイメージしておかなければならない理由がここにある。

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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