コロナウイルスの研究は、獣医学領域で盛んである。これまでの研究で、個体に感染するために必要なウイルス量は、感染実験により明らかになっている。一定以上のウイルスが感染門戸に付着しなければ感染しないのである。しかし病原性が高い人のウイルスの場合、人を用いた感染実験が困難なため、感染に必要なウイルス量は、正確にはわからない。
実はウイルス量に絶対的な数字はない。遺伝物質のコピー数、特定の細胞への感染力価、動物への感染力価など、さまざまな数字がある。試験管内で細胞に感染するのにいくつのウイルス粒子が必要かすら、明らかにすることは難しい。個体への感染に必要なウイルス量も実験条件によって変わってくる。わからないことずくめだが、このままでは、混乱が長引くだけである。ここは研究者の長年の勘所が必要になってくる。
新型コロナウイルスの感染経路は、接触感染と飛沫感染である。いずれの場合も、門戸に到達するウイルスを減らしさえすれば、感染を防ぐことができる。
接触感染はウイルスが付着した手を目・鼻・口にもっていくことで感染する。この場合、付着した感染性ウイルスを1/100に減らせれば、感染はまずしないと私は考えている。1/100に減らすことを目標にするのであれば、せっけんを使わず、水道水で洗い流すだけで十分である。むしろ、頻繁な手洗いが鍵となる。
飛沫感染はマスクをすることでかなり予防できる。マスクから漏れ出てくる微粒子中に含まれるウイルスも感染性があるが、これは換気をすることで感染を防ぐことができる。無症状でもウイルスが口や鼻から出ている可能性があるので、人と接触する場合は、お互いマスクをすることが重要である。
これだけのことを守ることにより、感染確率を大幅に減らすことができる。8割減らすことも可能ではないか。人に会っても8割減が達成できれば、経済も守ることができるのだ。
(おわり)
研究33年ウイルス学者が語る新型コロナ