今こそ知っておきたい抗ウイルス薬

ウイルス感染症はウイルスの増殖で起こるトラブルが問題に

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 感染症の中でも「ウイルス感染症」は、細菌など他の感染症と比べて治療が難しいといえます。その理由の1つとして、薬が少ないことが挙げられます。

 風邪をひいた時や歯科医院で処方してもらう「抗生剤」(抗生物質)は種類が豊富じゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、抗生剤は細菌感染症を治療するための薬で、ウイルスには効きません。ウイルス感染症の治療薬は「抗ウイルス薬」と呼ばれ、抗生剤とは区別されるのが一般的です。

 抗ウイルス薬の種類が少ない理由はいくつかあります。薬の化学的性質による製剤化のしにくさはともかくとして、①ウイルスは人の細胞の中で増えるため、細胞の中まで薬を運んで増殖機構を抑えなければならない(細菌は細胞の外で増殖する)②ウイルスは特定の臓器で増えることから、特定の臓器に薬を運ばなくてはならない――といった理由が挙げられます。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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