コロナ禍での熱中症対策

熱中症の応急処置に必要な「FIRE」の4カ条

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 コロナ禍のもとで迎える今年の夏において、マスク着用と暑熱順化の不足のために、激増する可能性もある熱中症。その症状としては、めまいや立ちくらみに代表される「熱失神」。足のつり、筋肉のけいれんなどが起こる「熱けいれん」。全身の倦怠感、嘔吐、頭痛などの「熱疲労」。体温の上昇、意識がはっきりしなくなったり、言語が不明瞭になるなどの「熱射病」といった健康被害が表れる。

 熱中症は重症度において、軽症のⅠ度、中等症のⅡ度、重症のⅢ度に分けられる。Ⅰ度の症状はめまい、立ちくらみ、大量の発汗など。Ⅱ度は頭痛、吐き気、嘔吐、集中力や判断力の低下。Ⅲ度は意識障害、けいれん、手足の運動障害、呼びかけへの反応がおかしくなるといった症状として表れる。Ⅱ度なら医療機関への受診、Ⅲ度なら入院加療を要する。自力で病院までたどり着けない場合は、救急車を呼ぶことも必要だ。

「熱中症の応急処置には『FIRE』の4つが大事といわれています。F=Fluid、つまり水分補給。I=Icing、冷やす。R=Rest、休憩させる。E=Emergency call、救急車や周囲への助けを呼ぶ、の4つです」

 こう説明するのは、帝京大学医学部付属病院高度救命救急センター長で同大学医学部救急医学講座の三宅康史教授だ。環境省「熱中症予防声かけプロジェクト」の実行委員長も務める、熱中症の第一人者でもある。

 熱中症が疑われたら周りの人に協力を求め、冷房の効いた屋内など涼しい場所で安静にさせて、体表を冷やしながら水分補給を試みる。うまく飲めればそのまま様子をみてもいいが、水が飲めなかったり、状態がよくならない場合は、ためらわずに救急車を呼ぶか、医療機関を受診するべきだと三宅医師は断言する。

 もっとも、これは誰かが一緒にいた場合に可能になることで、一人でいるときに急に具合が悪くなったら、自力で救急車を呼べない状態になってしまうこともある。

「以前は近所の人や行政が一人暮らしの高齢者を訪ねて、体調を聞いたりしていましたが、このコロナ禍で、それもできにくくなっています。子供が離れて暮らしている場合は、せめて1日1回電話をかけて、体調は変わってないか、食事をできているかを聞くことで熱中症の予兆を察知し、未然に防ぐことが非常に大切です」

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