第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証

<1>呼吸器だけではない 血液介在の全身感染症だった

(米国立アレルギー感染症研究所提供)

 弱毒であるが故に感染力が強い、一部は血管に侵入して多臓器を感染させる、症状が治まっても体内からウイルスが消えるとは言えず何かの拍子に再活性化もあり得る――。新型コロナウイルスの特徴を表現するとこうなるのだろうか。

 当初、SARS(重症急性呼吸器症候群)の近縁である新型コロナウイルス感染症は呼吸器の病気だと考えられてきた。新型コロナウイルスが上気道で感染して少量増殖し、やがて気管支や肺へ移行し、その粘膜の細胞でのみ大量増殖すると考えられてきたからだ。ところが、SARSウイルスと同じく、その一部は血液を介して腸管や心臓、血管内皮、リンパ球など多くの臓器に感染・増殖することがわかってきた。新型コロナウイルス感染症はSARSと同じく全身感染症であり、よりその傾向が強いようだ。全身で血栓が見つかり、脳梗塞や心筋梗塞が目立つのもそのためだ。しかも、このウイルスは症状が消えてもその原因ウイルスが体内から消えるというものでもない可能性がある。治癒したとされる感染者の中に2回、3回PCRが陽転する人がいるからだ。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。

「PCR検査は確かに感度は高いのですが、検体採取の場所にウイルスがいなかったり、検体採取の技術力の差で結果が左右されるため、陽性の人がたまたま陰性になったのかもしれません。そもそも抗体がウイルスに対して有効かどうかもわからず、再感染の可能性もゼロではない。しかし、新型コロナウイルスがPCR検査の対象である咽頭部からは消えて、血管内皮や血液細胞、骨髄などその他の臓器で無症状のまま持続感染している可能性もある。他のウイルスではしばしば見られることです」

 すべての生物は多くの子孫を残そうとする。SARSウイルスと同一祖先を持ち、別々に進化してきた新型コロナウイルスも地球上で最強の宿主に取り付くため、“親戚”のSARSウイルスと異なる特徴を持つ。弱毒化という武器だ。

 ウイルスは単独では生きていけない。SARSのように強毒なウイルスは宿主を簡単に殺してしまったり、感染早期から動けなくしたりするため、広く感染することはできない。そのため、新型コロナウイルスは弱毒化という方法を取った。宿主は感染しても数日から2週間程度は自覚症状がないため動き回り、ウイルスをまき散らす。そして多くの感染先を確保する。ひょっとしたら、弱毒化により、臓器によっては痛みや不快感などの症状が出ないまま持続感染できる仕組みを獲得しているのかもしれない。

 新型コロナウイルスのもうひとつの武器はACE2受容体と呼ばれる入り口を選択したことだ。ウイルスはどんな細胞にも感染できるわけでなく、表面に侵入口となるタンパク質をもった細胞にのみ感染する。そこから細胞内に入って細胞内の材料を使ってウイルスを大量にコピーして感染拡大していく。ACE2受容体はさまざまな臓器の細胞表面に発現しているため、新型コロナウイルスはより宿主たるヒトにより強固に感染・増殖することができるのだ。SARSウイルスも同じ侵入口を選択しているが、新型はそれと結合するウイルス表面の突起状のタンパク質(Sタンパク質)が、より結合しやすく変異したと考えられる。

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