「死ぬまで元気」を目指す

難聴は認知症の危険因子 補聴器は早めの装着で慣れること

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 記者の母は70代後半。数年前と比べると、かなり耳が遠くなってきたように思う。

 返事が欲しいような会話でも、「うん、うん」とただうなずくことが増えた。よく聞こえず、適当な相づちで乗り切ろうとしているのだろうが、果たしてこの状態を知らん顔して見過ごしてもいいのか、心配だ。

「70歳を越えると、ほとんどの音域の聴力が、軽度から中等度の難聴レベルにまで低下する人が多くなります」

 こう話すのは、国際医療福祉大学熱海病院検査部の〆谷直人部長。聴力は30代以降になると、高音域からゆっくり低下していく。それでも日常生活の中の音や会話を構成する音の大部分は聞こえているため、60代になるまで特に聞こえの悪さを意識しない人が多いそうだ。

 記者は母に「プレゼントするから補聴器を使っては?」と何度か提案したのだが、かたくなに拒否され続けている。しかし、補聴器はつけなくても問題ないのだろうか。

「補聴器は、購入してすぐに快適に聞こえるものではないんです。脳の聴覚中枢が補聴器に慣れるには約3~6カ月かかるといわれています。できるだけ年齢が若いうちから使い始めた方が、補聴器を通して聞く音に慣れやすい」(〆谷部長)

 最近の主流はデジタル補聴器で、聴力に合わせて細かく音を調整できる。そのため年齢を重ねて多少聴力に変化が出たとしても、再調整して長く使い続けられる。装着しても、あまり目立たない小さなサイズもある。

「残念ながら、一度低下した聴力は取り戻せません。生活に不便があるなら補聴器相談医(耳鼻咽喉科)による診断と聴力検査を受けることをお勧めします」と〆谷部長。

 難聴になって時間が経つと、言葉を聞き分ける力がだんだんと低下し、QOL(生活の質)が下がることもある。

 2017年には、国際アルツハイマー病会議で「予防できる認知症の要因の中で、難聴は最も大きな危険因子」と指摘されている。補聴器装着を早めに検討した方がいい。

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