去る5月25日、新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が全国で解除されました。新規感染者の人数が一時的にではあるにせよ、減少していることは間違いないでしょう。
世界的には依然として猛威を振るっている新型コロナウイルスに対し、学校の休校や、不要不急の外出自粛、人と人との距離をとるソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)など、流行の拡大を防ぐためにさまざまな方法が実施されています。また、インフルエンザのように、気温や湿度などの環境的要因も流行状況に影響を及ぼす可能性があります。
そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大に、どんな要因が、どれほど影響しているのかを検討した研究論文が、2020年5月8日付でカナダ内科学会誌に掲載されました。
この研究では中国、韓国、イラン、イタリア以外で、新型コロナウイルス感染症の発生が確認された144地域(37万5609人)が対象となりました。2020年3月7~13日の平均気温、平均湿度、学校の休校措置、集団集会の制限、ソーシャル・ディスタンシングの実施が、同3月21~27日における流行状況に、どのような影響を与えたのかが検討されています。
解析の結果、新型コロナウイルスの感染者数は、集団集会の制限で35%、学校の休校措置で37%、ソーシャル・ディスタンシングの実施で38%、統計的にも有意に低下しました。
他方で気温や湿度の上昇については、明確な関連性は示されませんでした。
この研究から明らかなのは、新型コロナウイルスの流行に気温や湿度が与える影響はわずかであるということ。そして感染予防としての手洗いに加え、いわゆる3密(密閉、密集、密接)の回避が流行の拡大防止に重要であるということです。
役に立つオモシロ医学論文