妊婦の新型コロナ感染 将来的に子供の自閉症リスクを上げる

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 妊婦が新型コロナウイルスに感染したらどうなるのか? 現時点では、病状経過はほかの人と変わらず、胎児への感染も見られなかったというが――。妊婦と新型コロナに関して、6月2日、ドイツの歴史的な精神医学雑誌「European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience」に論文が掲載された、千葉大学社会精神保健教育研究センター副センター長の橋本謙二教授に話を聞いた。

 新型コロナに感染した妊婦については、中国の研究者が世界的権威のある医学誌「ランセット」に2月に投稿した。妊娠中の母親33人を追跡調査すると、新生児3人に新型コロナの感染が確認された。このうち1人は早産で生まれ、肺炎、呼吸困難などで病状は深刻。残り2人は発熱などの症状があり、1人は肺炎を発症。しかし3人とも、治療によって最終的には新型コロナウイルス検査で陰性になった。

 一方、新生児の新型コロナ感染とは別の角度から、妊婦と子供たちの追跡調査が必要と言うのが、橋本謙二教授だ。

「ランセットの投稿で私が注目したのは、妊婦の炎症マーカーC反応性タンパク(CRP)が異常に高くなっていた点です。CRPが高い、つまり体内で炎症が起こると、生まれてきた子供が将来、自閉症スペクトラム症や統合失調症を発症するリスクが高くなります」

 これは複数の追跡調査で証明されている。体内の炎症は新型コロナに限って起こるのではなく、インフルエンザなどの感染症やストレスなどでも起こる。

 かつてオランダでインフルエンザが大流行した時、インフルエンザに感染した妊婦を追跡調査したところ、それらの妊婦から生まれた子供たちは、統合失調症を発症した率が高かった。

■抗炎症作用のある食品の積極的摂取を提案

「別の研究では、妊娠している母親のCRPレベルが高いグループでは、低いグループと比較して、子供の自閉症スペクトラム障害を起こす率が43%高いという結果が出ています」

 妊婦が新型コロナ感染などで体内に炎症が起こることを、「母体免疫活性化」と呼ぶ。母体免疫活性化が、生まれてくる子供の発達障害(自閉症スペクトラム、統合失調症など)の発症リスクを上げることは、橋本教授を含む多くの研究グループが行ったマウスの実験でも証明されている。自閉症スペクトラムは3歳前後で診断がつき、統合失調症は思春期以降に発症する。

 だから、新型コロナに感染した妊婦や、それらの妊婦から生まれた子供の追跡調査が必要ではないかと、橋本教授は指摘するのだ。

 外出を控える、3密を避ける、マスクを着ける、手洗いや手の消毒など基本的対策に加え、できることはあるのか? 橋本教授が科学的根拠(エビデンス)がある対策として提案するのが、抗炎症作用のある食品の積極的摂取だ。

「スルフォラファンという強い抗炎症作用を持つ物質の前駆体グルクロファニンを含むエサを思春期のマウスに与えると、母体免疫活性化で生まれたマウスの小児期、及び成人期における行動異常を予防できることが証明されています」

 つまり、新型コロナに感染した母親から生まれた子供に、小さい頃から日常的にスルフォラファンを取らせると、自閉症スペクトラムや統合失調症の発症リスクを下げられるかもしれないということ。

 また新型コロナに感染した妊婦がスルフォラファンを摂取すると、子供の自閉症スペクトラムや統合失調症の発症リスクを下げられるかもしれないということ。スルフォラファンは、ブロッコリーや、ブロッコリーの芽であるブロッコリースーパースプラウトに含まれている。スーパーで手に入る。

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