進化する糖尿病治療法

高齢者の心不全対策…SGLT2阻害薬が救世主になるか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今は、糖尿病を発症しても、適切なタイミングで適切な治療・検査を受けていれば、50歳、60歳で亡くなることはほぼありません。効き目のいい糖尿病の薬がたくさん出ているため、長生きする糖尿病患者さんが珍しくなくなりました。

 そこで今、問題になっていることのひとつが、糖尿病を患う高齢者の心不全です。

 高齢者になると、健康な人でも、血管が硬くなり、動脈硬化が起こります。糖尿病の場合、心臓に栄養を送る太い血管(冠動脈)の動脈硬化が起こりやすいだけでなく、心筋細胞に直接栄養を送る顕微鏡レベルの細い血管(微小血管障害)にも動脈硬化が起こり、心筋のエネルギー代謝に影響を与えます。それによって糖尿病がある人は心不全のリスクが高くなるのです。

 動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中などの原因にもなりますが、これらはステントやカテーテル治療の進歩で助かる人が増えました。しかし、心筋梗塞で命を落とさなくても、心臓に疾患を抱えていることは変わりません。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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