ディズニー映画と笑いと塗り絵 今すぐできる「がん対策」

ストレスがたまりやすい時だからこそ(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 子どもも大人も夢中になれるディズニー映画だが、今後はがん治療にも導入されるかもしれない。いや、がん予防にも有効かも。

 国際的に評価の高い医学雑誌「JAMA」のオープンアクセスジャーナルに発表されたのが、ディズニー映画が婦人科がん患者の緊張や不安、ストレスを軽減させるという内容だ。

■自律神経のバランスを整えることがカギ

 欧米では音楽療法が外科的手術の前後や出産時、慢性疼痛の緩和、集中治療室でのストレス緩和、身体的リハビリテーションなど幅広い医学領域で実践されているが、オーストリア・ウィーン医科大学の研究者は音楽と映像を効果的に組み合わせたディズニー映画に着目し、抗がん剤治療を予定している婦人科がん患者50例を対象に実験を行った。

 50例をランダムに1対1に分け、一方は抗がん剤治療中にディズニー映画を観賞し、もう一方は観賞しなかった。研究に用いた映画は、「シンデレラ」「わんわん物語」「メリー・ポピンズ」など8本で、1950~89年に製作されたもの。

 結果、ディズニー映画を観賞したグループは、そうでないグループに対し、情動に関するスコアが高く、社会生活の喪失や疲労状態が改善され、緊張や不安が少ないという結果が出た。

「ディズニー映画に限らないと思いますが、懐かしい画面があり、基本的にハッピーエンドの内容の映画によって、自律神経のバランスを整えられたことが大きいのではないでしょうか」

 こう言うのは、医学博士の米山公啓氏。自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が優位になると心身が緊張し、副交感神経が優位になるとリラックスモードになる。

■ストレスフルな人は特に必要

「ところが、ストレスや不規則な生活習慣で交感神経の優位が続くなどして自律神経のバランスが崩れると、交感神経はほとんど全ての臓器の働きに関係しているので、血圧上昇、心拍上昇、不眠などさまざまな不具合が生じてくるのです」(米山医師=以下同)

 実は、ストレスなどによる交感神経の緊張が、がんの増大や転移に強い影響を及ぼすという研究結果も発表されている。

 それまでにも、疫学研究でストレスががんに影響する可能性があることは言われていた。岡山大学大学院の神谷厚範教授らは、乳がんの増大に伴い、自律神経が乳がん組織に入り込むことを発見。さらに、交感神経の密度が高い(交感神経が優位)患者のグループは、交感神経密度の低い患者に比べて予後不良であることも発見した。

 マウスを使った動物実験では、独自の技術で乳がん組織の交感神経を刺激すると原発がんは増大し、遠隔転移が増え、乳がん組織の交感神経を除去すると原発がんの増大と遠隔転移は抑制されることも突き止めた。

 ディズニー映画の研究は婦人科がんを対象とし、交感神経の緊張に関する研究は乳がんを対象としている。これらの研究だけではすべてのがんに当てはまるとはなんとも言えないものの、自律神経のバランスを崩さない生活は心掛けたい。

「日常的にできることといえば『笑い』もいい。自律神経のバランスを整える作用があり、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけて攻撃するナチュラルキラー細胞(NK細胞)を活性化させ、免疫機能を上げる作用もあります」

 自律神経に関しては、最近は「塗り絵」もブームだ。

 絵を塗ることに集中することで、無心になれ、ストレスから解放され、自律神経のバランスが整うという。

 多種多様の大人向けの塗り絵が、書店に並んでいる。ディズニー映画観賞も笑いも塗り絵も、やろうと思えばすぐにできる。

関連記事