「私自身は、病院にするのか自宅にするのか、最期を迎える場所を決めていません。自分がどのように衰えていくのか、体力を失っていくのかは、まだ分かりませんからね。体の状態がどのように推移していくのかによっても違ってきますから、現段階で計画を立てることはできません。ただはっきりと言えることは、体が動く限りは医師の仕事を続けたいということ。このまま訪問診療に取り組んでいきたいです」
小堀さんは80歳を越えた今も、驚くほど元気だ。背筋はピンと伸びているし、早足でスタスタと歩く後ろ姿からは、若さすら感じる。昔のことや固有名詞を思い出す時に、言葉に詰まることもない。数字や具体例を盛り込みながら、スラスラとよどみなく話すのだ。
日常的に死と向き合い、死を見つめながらも、自らその準備を始めるには早いのだろう。
今も毎日、埼玉県にある病院まで片道20キロをマイカーで通勤。混雑する日は片道1時間かかることもあり、往復3時間を費やす日もあるそうだ。ただ、それを苦にしている様子はない。
死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期