第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証

<6>ウイルスの突然変異が危険とそうでない場合があるのはなぜ(1)

(国立感染症研究所提供)

 突然変異とは遺伝情報(生物を構築するために必要なタンパク質を適切に作るための情報)が変化してしまうことである。コロナウイルスは遺伝情報の格納にRNAと呼ばれる物質を使っている。

 コロナウイルスRNAは、リボヌクレオチドと呼ばれる分子がおよそ3万個、鎖のようにつながった化合物である。リボヌクレオチドは糖、リン酸、塩基の3つの要素から成り立っていて、塩基の部分が異なる4種類あることが知られている。コロナウイルスRNAの鎖の中には、4種類のリボヌクレオチドの塩基が特定の規則に従って並んでいる。このRNAの塩基の並び方に遺伝情報が格納されている。

 したがって、コロナウイルスの突然変異とは、RNAの鎖状につながった塩基の並び方に変化が生じることである。そのことで、作られるタンパク質そのものが変わったり、またその作るタイミングや量なども変化することがある。では突然変異の原因は何か? そもそも、コロナウイルスは遺伝情報を持つものの、自分自身で増殖できない。増殖するために、人を含めた生物の細胞に融合して、コロナウイルスRNAを細胞に移す、つまり感染する。感染した細胞の中で、コロナウイルスRNAの遺伝情報に従ってコロナウイルスのタンパク質は作られ、コロナウイルスRNAも複製される。このRNAの複製の際に生じるエラーがコロナウイルスの突然変異の主な要因である。コロナウイルスに関しては、RNA複製時のエラーを修復する特別な酵素を持っているが、それでも人などの生物のエラー率に比べて、正確な値は分かっていないが、1000倍やそれ以上高いと考えられている。

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