進化する糖尿病治療法

肥満はコロナ重症化の危険因子 フランスの研究者が発表

写真はイメージ(C)PIXTA

■ICU管理になるリスクも高い

 ところでなぜ、肥満はコロナ重症化の危険因子になるのでしょうか?

 それは、肥満がさまざまな悪循環を起こすことと関係しています。

 肥満が進むと、体内にある脂肪を蓄積する貯蔵庫「白色脂肪細胞」の体積が大きくなり、数が増えます。すると、生きていく上で必要不可欠なホルモンの分泌量が変化します。具体的には、血液中からブドウ糖を取り込んだり傷ついた血管を修復する「アディポネクチン」、血液中からのブドウ糖の取り込みを抑制する「TNF―α」や「レジスチン」、血管収縮作用のある「アンジオテンシノーゲン」、食欲抑制などの作用がある「レプチン」、止血作用のある「PAI―1」など。あるホルモンは分泌量が増え、あるホルモンは分泌量が減るのです。

 すると体に異常が起こる。たとえば、肥満でTNF―αとレジスチンが増加し、血液中のブドウ糖濃度が高くなって高血糖になり、動脈硬化が進行します。アンジオテンシノーゲンも肥満で増加し、血管収縮が促進して血圧が上がり、やはり動脈硬化が進行します。ところが、傷ついた血管を修復するアディポネクチンは肥満で減少するので、血栓ができやすくなります。また、止血効果に関係するPAI―1が肥満で増加することも、血栓をできやすくします。まさに悪循環です。

 コロナは今後、インフルエンザのように毎冬流行を繰り返していくでしょう。肥満の人は、それを解消することが第一。さらには、自費になりますが、炎症系マーカーをチェックしたり、健康保険内では頚動脈エコーの検査をするのも一つの手です。これらで動脈硬化の進行度が分かります。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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