日食を見て目が焼けた…視力が低下し社会的失明の可能性も

日食を見る子どもたち
日食を見る子どもたち(C)共同通信社

 6月21日は、日本全国で部分日食が見られる日だ。国立天文台のホームページによれば、日食とは月が太陽の前を横切るため、月によって太陽の一部(または全部)が隠される現象。次に日本で部分日食が起こるのは2023年だが、これは一部地域でのこと。日本全国での部分日食は2030年6月1日で、10年後になる。天体ファンならずとも部分日食を楽しみたいが、二本松眼科の平松類医師は「日食を見るときは、くれぐれも“見方”に注意」と声を強くして言う。

「日食が起こるたびに、目のトラブルで来院する患者さんが増えるのです」(平松医師=以下同) 目のトラブルとは、「直接太陽を見て目が焼けてしまった」というもの。皮膚がヤケドを負うと、その瞬間から痛みを感じ、大抵は何とかしようと思う。ところが目の場合、太陽の光で焼けてしまっても、明らかな異常を感じにくい。

「太陽がまぶしくて目がくらんで見づらくなった経験は、多くの人がしていることでしょう。そういった感覚はあります。ところが、まぶしい、見えづらいなどと思っても、そのうち何とかなるだろうという程度の違和感なので、眼科に行こうとは思わない。痛みや、目が焼けたような感覚もありません」

 そのまま放置し、しかしなかなか元の見え方に戻らない。その時点で慌てて平松医師の元に「見え方がおかしい」と相談に来るケースが圧倒的に多いという。

 そもそも、なぜ目は太陽の光で焼けるのか? それは、目というのは水晶体というレンズを通して網膜の中心(黄斑)に光が集まるようにできているからだ。

■0.82秒以上で網膜がヤケド

「いわば虫眼鏡のような役割です。虫眼鏡で黒い紙を焼く実験をしたことがある人がいるかもしれません。これと同じように網膜上に太陽の光が集まるのです。太陽の光を直接見る時間が0・82秒を過ぎると、危険と考えられます。目(網膜)が焼けるといわれています。1秒以下ですから、本人は“ほんのちょっと見ただけ”と思っている場合でも、網膜が焼けることにつながりかねません」

 網膜が焼けると、そこが欠損し、視界の一部が見えづらくなる。治療は点眼薬や経口薬だ。視力を取り戻せる人もいるが、網膜が焼ける前と同じ程度まで戻る人は多くはない。人によっては、完全失明までいかないにしろ、社会生活を送るのに困難を感じるほどの視力低下に至る人もいる。

「とにかく、網膜を焼かないようにすること。それに尽きます」

■サングラスをかけても駄目

 具体的に、絶対にしてはいけない部分日食の見方は、「肉眼で見る」「望遠鏡や双眼鏡で見る(日食観察用の望遠鏡などは別)」「色付き下敷きやCDを通して見る」「サングラスやゴーグルを着けて見る」「日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡で見る」。

「サングラスやゴーグルは“これなら大丈夫だろう”と思ってしまう人が珍しくありません。サングラスなどは紫外線対策には有効です。しかし、太陽光のうち紫外線が占める割合は5%ほどで、それ以外の光はサングラスではカットできません」

 安全に部分日食を見るには、日食専用のグラスや遮光板を使うことが必要。今回の部分日食は、東京の場合、16~18時に起こる。薄暗いため、光が見えにくいからと、日食専用グラスを通さず直接見たくなるが、それはやってはいけない。

「日食を見続けるのもお勧めできません。1分ほど見たら十数分、日食以外のものを見て、また日食を見る。目にダメージを与えない方法で、部分日食を楽しんでください」

 取り返しがつかないことにならないように。

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