「死ぬまで元気」を目指す

認知症による物忘れと老化による物忘れの分岐点は自覚度

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 都内に住む62歳の男性は、最近物忘れに悩まされているそうだ。娘から「認知症じゃない?」と冗談交じりに言われることも多くなった。娘には「単なる老化だ」と返しているが、本当に老化なのか、実は不安に思っている。

 そもそも認知症による物忘れと、老化による物忘れにはいったいどんな違いがあるのだろうか。

「60歳ごろになると、記憶力に加え判断力や適応力なども衰え始め、だんだんと物忘れが多くなるようになります」と話すのは、国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長。

 人の記憶力は20歳代をピークに、徐々に減退していく。たとえば「人の名前がのど元まで出ているのに思い出せない」「うっかり約束を忘れる」「物の置き場所を思い出せなくなる」などは老化現象によるもので、認知症とは異なる。つまり自分で記憶力の低下を自覚しているような物忘れは、加齢によって誰にでも起こることだ。

 一方、認知症の場合は、物忘れの自覚そのものがなくなってしまう。認知症の初期によくみられる症状としては「自分の経験した出来事全体を忘れる」「ヒントをもらっても思い出せない」「物忘れの自覚がない」「日時の認識が混乱する」「怒りっぽくなり、意欲が乏しくなる」など。一つでも当てはまるようなら、認知症の疑いがあるため、精神科や神経科、老年科を受診してみたほうがいい。

「ただし睡眠薬や精神安定剤などの脳に作用する薬によって、物忘れや知能低下などの副作用の症状を示すことがあります。また、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの脳の疾患、うつ病、甲状腺機能低下症などが物忘れの原因になることも。いずれにせよ日常生活に支障が出るほど物忘れがひどい場合は、まずかかりつけ医を受診してください」と〆谷部長。記憶の衰えは、だれでも平等にやってくる。「自分は違う」と過信は禁物だ。

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