病気を近づけない体のメンテナンス

筋肉<下>筋肉を増やす3カ条と5つの筋トレメニュー

写真はイメージ(C)PIXTA

 人間の筋肉は鍛えていなければ、30代をピークとして加齢とともに10年で10%の割合で減ってくる。それが世代を増すごとに感じる体力の衰えの原因になる。しかし、筋肉は効率よく鍛えれば、何歳からでも10~20%増やすことが可能。つまり、体力の衰えにストップをかけたり、逆に体力を10~20歳若返らせることができるのだ。では、どんな運動習慣が効果的なのか。筑波大学・人間総合科学学術院の久野譜也教授が言う。

「よく『ウオーキングをしているから大丈夫』と思い込んでいる人がいますが、それは間違いです。歩くだけで下半身の筋肉を鍛える効果はほとんど得られません。ウオーキングなどの有酸素運動は、『代謝・動脈系(肥満・メタボ系)』の衰えを防ぐ運動です。『筋肉系』の衰えを防ぐには、筋トレなどの無酸素運動が必要です。この2つの運動を行うことで、初めて体力年齢を若返らせる効果が生み出されるのです」

 運動習慣のポイントは、次の3カ条が鉄則になるという。〈1条〉「筋トレ(無酸素運動)」と「有酸素運動」の両方を行う。〈2条〉上半身よりも下半身を中心に鍛える。〈3条〉運動を一生にわたって継続していく。

 有酸素運動は、いつでもすぐできるウオーキングが最も適している。目標は1日の歩数で決めなくていい。歩けない日があっても、1週間単位で帳尻を合わせればいいのだ。目標は1週間のトータルの歩数が「5万6000~7万歩」とする。

 では、筋トレ(無酸素運動)はどんな運動が効果的なのか。久野教授が勧める筋トレメニューは5種類ある。どれも椅子を使って行う下半身を鍛える筋トレだ。

①つかまりスクワット

 両足を肩幅に広げ、椅子の背を両手で持って真っすぐ立つ。そして、上体は真っすぐのまま膝を曲げていく。息を吐きながらゆっくり腰を落としていき、膝の高さくらいまで腰を沈ませる。注意点は膝を曲げる際に、膝頭がつま先よりも前に出ないようにする。その後は息を吸いながらゆっくり元の姿勢に戻る。この動作を繰り返し行う。

②座って膝伸ばし

 椅子に腰かけ背筋を真っすぐ伸ばし、両手は椅子の座面をつかむ。そして、息を吐きながら片方の足をゆっくり上げて、膝をピンと伸ばしたらそのまま少しキープ。このときに太ももの前側の筋肉を使っていることを意識する。この動作を左右交互に行う。

③座って太もも上げ

 椅子に座り、両手で椅子の座面をつかむ。次に、片方の足を上げると同時に上体をかがめて、膝を胸に引きつけていく。背中が丸まってもいいので、膝頭が顔に近づくくらい大きく足を上げる。腹筋を意識しつつ、スローモーションのようにゆっくり行うのがコツ。片方の足を5回上げたら、足を替え、もう片方も5回行って1セットとする。

④足の前後運動

 椅子の横に立って片手で椅子の背をつかむ。次に、椅子に近い片方の足の膝を曲げて前へグイッと大きく引き上げる。これ以上、上がらないところまできたら、今度はその足を下げつつ大きく後ろへ引いていく。足を後ろへ引いた際に、膝を伸ばしてかかとを床に着け、ふくらはぎの後ろやアキレス腱を伸ばす。この「大きく上げて、大きく引いて」の動作を5回行ったら足を替え、反対側も同じように5回行って1セットとする。

⑤足の左右運動

 椅子の後ろに背筋を真っすぐ伸ばして立ち、両手で椅子の背をつかむ。そして、片方の足を真横にゆっくり上げ、上がるところまで上げたら、ゆっくり戻す。このとき、上体は真っすぐのままキープして、足を上げるときは高く上げることよりも真横に上げることを意識する。片方の足を5回上げたら、足を替えてもう片方も5回行って1セットとする。

 ①と②の筋トレは、一度に10回から始め、余裕が出てきたら20回、30回と増やしていく。③~⑤の筋トレは、一度に1セットから始め、余裕が出てきたら2セット、3セットと増やしていく。

「1日に5種類の筋トレをすべてやる必要はありません。1日のどこかの時間で3種類できれば十分。3種類行う場合は①のスクワットを毎回行う基本に据えて、あとの2種類はそのときの好みで入れ替えていけばいいでしょう」

 また、筋トレは必ずしも毎日行わなくてもいい。できるだけ週5日を目標に行う。ウオーキングも筋トレも無理せず、一生継続していく心構えが大切になるという。

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