第2波に備えよ 新型コロナを徹底検証

<11>本当に「川崎病」を発症させるのか?欧米で相次ぎ報告

屋外で間隔を空けて授業を受ける子どもたち
屋外で間隔を空けて授業を受ける子どもたち(C)LaPresse/共同通信イメージズ

 発症すれば冠動脈などの血管に炎症が起き大事に至ることがある川崎病。それに似た子供の症例が世界各地で報告されている。新型コロナ感染症流行後、イタリアでは症例数が通常の約30倍に急増しており、このウイルスが原因である可能性が報告された。子供へのリスクについては、他国にも重要な警告である。

 イタリアの感染拡大の中心地となったベルガモでの川崎病に似た症状の子供の詳細な分析が、2020年5月14日の医学誌ランセットに掲載された。川崎病の症状を示した子供の数は、新型コロナ流行前の今年2月17日までの5年間で19人だったのに対し、今年2月18日から4月20日までで10人と、頻度でいえば30倍に増加した。

 患者の平均年齢は、新型コロナ流行前の症例では3・0歳だったのに対し、流行後は7・5歳。さらにニューヨークと英イングランドでおよそ90人の症例が報告された。英国の患者では心臓超音波検査で冠動脈の炎症性変化や冠動脈瘤が認められている。5月初旬には、米国で200人以上の患者が出ている。

 川崎病とは、1967年に川崎富作博士により発見された乳幼児が罹患する全身性の血管炎症候群のこと。発熱、両側眼球結膜の充血、いちご舌などの口唇・口腔所見、発疹、手足の硬性浮腫などの四肢末端の変化、非化膿性頚部リンパ節腫脹の6つが主要症状とされ、5症状以上を呈する場合に川崎病と診断される。その原因はいまだに明らかでないが、細菌あるいはウイルス感染、スーパー抗原、自己抗原などが原因として考えられている。

 日本川崎病学会は5月7日段階で日本に新型コロナウイルス感染症に関連する川崎病の症例報告はないとしているが、5月26日に韓国で川崎病ショック症候群の子供2例が報告された。

 川崎病になると、冠動脈などの血管炎や冠動脈瘤が生じることがあるが、細い血管の炎症が原因とみられる皮膚症状が、特に若い新型コロナ患者で出現するという報告がある。

 また、新型コロナでは、心臓の筋肉のダメージを示す血液中トロポニンの値が高いと、死亡率が高くなるかもしれないことを示す報告もある。

 東邦大学名誉教授の東丸貴信医師が言う。

「日本での報告がないのは、小児のPCR検査件数が極端に少ないせいかも知れません。ただし、川崎病の原因として旧型コロナウイルスとの関係も疑われたことがあるので、重症になった子供では川崎病の可能性や心臓血管の炎症について十分注意する必要があります。心臓や血管の超音波検査なども考慮する必要があるでしょう」

 川崎病の血管を特殊な顕微鏡で細かく見ると、細胞免疫を担うTリンパ球の活性化や液性免疫を担う免疫グロブリンの出現が認められている。また、新型コロナウイルス感染症でも増加する炎症性サイトカインが血中で上昇することが確認されている。また、炎症で内皮細胞が傷み、サイトカインで血管内部が活性化されると、血小板は凝集を起こしやすくなる。血管壁にもくっつきやすくなり、血栓が容易にできる環境となる。冠動脈などの小さな血管が感染すれば川崎病のような血管炎が起き、冠動脈瘤や心筋梗塞が生じる可能性があろう。

 また、脳血管でそういうことが起これば脳動脈の閉塞で脳梗塞となる可能性もある。注意が必要だ。

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