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米で論文報告 バランスの良い食習慣は心臓病を2割予防する

バランスの良い食事を心がける
バランスの良い食事を心がける

 食習慣と健康についてインターネットで調べてみると、その信頼性はともかく膨大な量の情報が検索されてきます。しかし、食事の内容と健康状態の関連性を長期追跡した研究データは限定的で、明確なことはあまりよく分かっていないのです。そんな中、食事内容と心臓病リスクの関連を、最大で32年間にわたり追跡した研究論文が、米国医師会が発行している内科専門誌の電子版に2020年6月15日付で掲載されました。

 この研究では、米国の女性看護師16万5794人、および男性医師4万3339人が対象となっています。食事内容は、米国で策定された4種の指針に基づき点数化(高得点ほど質の高い食事)されました。解析対象者は食事内容の点数に応じて5つの集団に分けられ、心臓病の発症リスクが比較されています。なお、結果に影響を与えうる年齢、人種、身体活動量、喫煙・飲酒状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

 その結果、心臓病のリスクは4つの食事指針で若干の違いはあったものの、食事の点数が最も低い集団に比べて、最も高い集団で14~21%、統計的にも有意に低下しました。また、食事の点数が25パーセンタイル上昇(集団全体を食事の点数によって4つに分けたとき1集団分の増加)するごとに、心臓病のリスクが10~20%低下することも示されています。

 食習慣に気を付けている人は、適度な運動や健診を積極的に受けるなど、食事以外にも健康に配慮していた可能性があります。ですから、食事の内容だけが心臓病のリスクを低下させているわけではないかもしれません。とはいえ、バランスの良い食習慣を心掛けることは、健康を維持するための基本といえそうです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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