死を身近に感じたことで…訪問診療医が実感した「新型コロナ」の教訓<下>

小堀鷗一郎医師(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスは在宅医療の現場も直撃している。感染を恐れて治療や入院を拒否する患者も増えた。多くの人は自らの最期に、改めて思いを巡らせるようになっている。

 新型コロナウイルスのリスクが高いのは基礎疾患を抱える中高年だ。彼らにとって感染は死に直結する怖さがある。志村けんさん、岡江久美子さんといった知名度の高い芸能人の命を奪ったことも、誰もが死から逃れられないのだという現実を教えてくれた。

「新型コロナウイルスの蔓延は我々に、『死はごく身近に存在する』という事実を突き付けました。多くの人はいや応なしに『死』と向き合わざるを得ない状況に置かれています。ただ、自らの死について考えることは決して悪いことではないと思います」

 人生の最期をどのように迎えるか、どうすれば自分らしく全うできるのか。それを考えられるのは、元気に生きている時だけだ。死を身近に感じられる今は、自らの死について冷静に考えるのに、とてもいい機会である。

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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